いよいよ映画の祭典、アカデミー賞授賞式が４日、ロサンゼルス（ＬＡ）で開催されます。ハリウッドが１年で最も華やかになる日ですが、セクハラ問題がクローズアップされる今年はどんな授賞式になるのでしょう。セクハラが暗い影を落とす中で行われる第９０回アカデミー賞ですが、映画の祭典を純粋に楽しむためのトリビアを交えつつ、直前のハリウッドの様子も写真でお伝えします。

会場に隣接するハリウッド＆ハイランドには、司会のジミー・キンメルの大きな看板が。画面下にテントが見えますが、ここがチェックインポイントで、当日はこの前にスターを乗せた車が停まり、続々とスターたちが会場入りします。前日まで雨が降っているため、テントが張られています

●アカデミー賞って？

　１９２９年に米映画芸術科学アカデミーによって設立された映画賞で、授賞式の前年１年間にアメリカ国内で公開された作品を対象に、優れた作品や監督、俳優や脚本、撮影、音楽、美術、衣装などに対して授与されます。第１回授賞式は１９２９年５月１６日にハリウッドにあるルーズベルトホテルで行われ、「つばさ」が作品賞を受賞しました。当時は現在とは異なり、授賞式は５ドルでチケットが販売され、２７０名が出席。式はわずか１５分で閉式となったと言われています。今年で９０回目を迎えるアカデミー賞は、現地時間４日に授賞式が行われ、その様子は世界中に生中継されます。

●誰がどうやって決めているの？

　アカデミー賞は、カンヌやベネチア国際映画祭とは異なり、正式な審査員は存在しておらず、アカデミー会員が選考しています。米映画芸術科学アカデミーの会員は、俳優、監督、プロデューサーや脚本家らによって構成されており、およそ７０００人弱の業界人が投票権を持っています。つまり、身内の同業者たちが仲間の功績を称えるお祭りでもあるのです。２０１６年の同賞で演技部門にノミネートされた俳優が全員白人であったことから人種問題に発展したことを機に、非白人と女性の会員数を増やす多様化が進められ、その結果、昨年から北野武、黒沢清、是枝裕和、俳優の仲代達矢らも投票権を得ています。ほか、渡辺謙や衣装デザイナーのワダ・エミらもアカデミー会員として知られています。

　会員になるには、映画界への貢献が認められて推薦されるか、アカデミー賞にノミネートされることが必要とされています。選考方法は、個々の会員がそれぞれの専門分野に投票し、各部門で５人のノミネーションが決まります。作品賞は全会員によって投票され、最高１０作品までがノミネートされます。最終選考は、ほぼ全ての部門が会員全員の投票によって決まり、授賞式当日に結果が発表されます。

会場となるドルビー・シアター前の道は完全に封鎖され、準備が進められています。フェンス越しに中の様子が見えますが、それも前日まで。当日は近づくことができなくなります

●授賞式はどこで？一般公開もあるの？

　授賞式は毎年２月の最終末または３月の第１日曜日にハリウッドのドルビー・シアターで行われます。チャイニーズ・シアターに隣接するドルビー・シアターは、ハリウッドの観光名所としていつも賑わっていますが、授賞式当日は早朝から周辺道路が東西計１．６キロに渡って全て封鎖され、スタッフや招待状を持つ関係者、ロサンゼルス市警察の警備担当者以外は会場付近に近寄ることはできません。授賞式に出席できるのは招待客のみで、チケットの一般販売は行われていません。招待されるのはノミネートされた人やその家族、関係者、前年度の受賞者、プレゼンターら。

　ハリウッド大通りには１５０メートルもの長さのレッドカーペットが敷かれていますが、交差点付近にはフェンスが設置され、幕で覆われているため、中の様子を外から見ることはできません。アカデミー賞の雰囲気を間近で感じたい人は、前日までならフェンス越しではありますが、レッドカーペットの設置作業をする様子を見ることができます。数日前にはドルビー・シアター入口付近にオスカー像も登場するので、そのタイミングで訪れるとオスカー像を写真に収めることもできます。

●プレゼンターは？

　今年の授賞式では、サンドラ・ブロック、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒーら過去の受賞者や「ワンダー・ウーマン」のガル・ガレット、「スター・ウォーズ」シリーズのマーク・ハミル、「君の名前で僕を呼んで」のアーミー・ハマーらがプレゼンターを務める予定。また、昨年の授賞式で作品賞の名前を誤発表する前代未聞のハプニングを起こしたウォレン・ベイティとフェイ・ダナウェイのコンビが、再び作品賞のプレゼンターとして登場します。

画面左手が、ドルビー・シアターの入口。右手側がレッドカーペットですが、前日もまだ準備でごたごたしているのが分かります。一般人はここより先には近づけません

●日本人のノミネートは？

　今年のアカデミー賞には、作品賞を含む６部門にノミネートされている「ウィンストン・チャーチル／ヒトラーから世界を救った男」に特殊メイキャップアーティストとして参加した辻一弘氏が、メイクアップ＆ヘアスタイリング賞にノミネートされている他、桑畑かほる氏が共同監督を務めた「ネガティブ・スペース」が、短編アニメ賞にノミネートされています。辻氏は過去２度ノミネートされており、チャーチルを演じた主演男優賞候補のゲイリー・オールドマンと共に初受賞が期待されています。

　同賞には過去にも日本人が多数ノミネートされており、近年では宮崎駿監督が２０１５年に名誉賞を受賞している他、２００９年には「おくりびと」が外国語映画賞に輝いています。

●今年の見所は？

　作品賞は「シェイプ・オブ・ウォーター」と「スリー・ビルボ－ド」の一騎打ちになると予想されていますが、最大の見所は作品賞の発表時、昨年の誤発表をどのようにネタにするかと言うこと。また、大混乱だった昨年の授賞式を上手く乗り切ったジミー・キンメルが２年連続で司会を務めることになっていますが、セクハラ問題にどう切り込んで笑いを取るのかにも注目が集まっています。　

　また、ゴールデン・グローブ賞や英アカデミー賞授賞式では、セクハラに抗議するため多くの女優が黒い衣装で出席。グラミー賞授賞式では、衣装に「白いバラ」をつけて出席するアーティストが目立ちました。ハリウッド女優らを中心に被害者と連帯感を示す「タイムズ・アップ」運動が盛り上がる中、果たしてアカデミー賞授賞式はどんなことが起こるのかにも注目しましょう。

（米ロサンゼルスから千歳香奈子。日刊スポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も）