海に大量のプラスチックごみが流出する海洋プラスチック汚染が深刻化する中、ここロサンゼルス(LA)では2014年からスーパーなどでビニール製レジ袋の無料配布が禁止されるなど独自のプラスチック削減政策が進められていますが、今、プラスチックごみの処理を巡って新たな問題が起きています。環境問題やエコに熱心な人が多いLAではリサイクルも盛んで、ペットボトルや空き缶をリサイクルセンターに持ち込む人も多く、市内のあちらこちらにあるリサイクルセンターはいつも賑わっていましたが、先週、カリフォルニア州最大のリサイクル業者リプラネットが州内の全てのリサイクルセンターを突如閉鎖。これにより大量のプラスチックごみが街にあふれ、リサイクルで生計を立てていた多くの人たちが路頭に迷うことになってしまいました。

突然閉鎖したリサイクルセンターのリプラネット
突然閉鎖したリサイクルセンターのリプラネット

カリフォルニアではペットボトルや缶入り飲料を購入した際に1本に付き10セントが徴収されるディポジット制度が導入されており、飲み終わったペットボトや空き缶をリサイクルセンターに持ち込むとその代金が返却される仕組みになっています。そのため、スーパーマーケットの駐車場にリサイクルセンターが併設されている所も珍しくなく、家庭で出たペットボトルや空き缶を買い物のついでに持ち込んで手軽にキャッシュ化することができましたが、その多くが閉鎖されてしまったためにリサイクル難民が続出しているのです。これまで大量のプラスチックゴミを受け入れてきた中国が昨年1月に海洋汚染を理由に受け入れを拒否したことで、世界最大の輸出国だったアメリカではリサイクル資源としてこれまで回収してきたプラスチックごみの行き場がなくなったことが理由にあげられています。

リサイクルセンターの前には大量のリサイクルごみが投棄されたまま
リサイクルセンターの前には大量のリサイクルごみが投棄されたまま

リプラネットも客から買い取った大量のプラスチックごみを売る先がなくなったため、資金が枯渇したことが閉鎖につながったと見られています。LAに住んでいると大きなショッピングカートいっぱいに拾い集めたペットボトルを入れて歩いている人を良く見かけますが、リサイクルは低所得者やホームレスの人たちにとっては重要な生活費になっており、月数百ドルを稼いでいる人も少なくなく、リサイクルセンターの閉鎖は生活に直結する問題でもあります。地元メディアによると、過去4年間でLAのリサイクルセンターは30%以上減少しており、リプラネットの閉鎖によって状況はさらに深刻化し、リサイクルするために1時間以上車を走らせたり、大量のプラスチックごみを手にバスに乗ってリサイクルセンターに通う人もいると言います。それでも高騰する家賃の支払いや学費、生活費などに充てるためにリサイクルセンターを探し求めて右往左往する人が後を絶たず、行き場を失ったプラチックごみと共に深刻な問題を引き起こしています。アースデイのグローバル拠点として活動するアースデイネットワークが昨年発表した記事によると世界中で2016年に販売されたプラスチックボトルは4800億本に上り、一部メディアでは21年には世界のペットボトル製造量は5833億本になるとの予想も出ています。その多くがリサイクルされずに廃棄されていると言われていますが、LAでもこれまでリサイクルされてきたプラスチックごみが行き場を失い、それが結果的に海に流れ出すという悪循環になることが懸念されています。

駅前に投棄されている誰かが集めたであろう行き場を失ったペットボトルが入ったゴミ袋
駅前に投棄されている誰かが集めたであろう行き場を失ったペットボトルが入ったゴミ袋

アメリカでは1日に5億本のプラスチック製ストローが使用されていると言いますが、LAでは今年からレストランで客からの要望がない限りプラスチック製ストローの提供が禁じられ、民間レベルでもフォーク、ナイフと言った使い捨てプラスチック製品の使用を自粛する動きも活発化しています。オーガニック製品を扱うマーケットなどでは、リサイクルされたプラスチックを再利用して作られた再利用可能な食品コンテナーや歯ブラシなどの製品もたくさん販売されていますが、それでもプラスチックごみは一向に減らず、むしろ増え続けているのが現状です。

シャンプーのボトルや歯磨き粉から洗剤のボトル、食品容器まで日常生活に必要なあらゆる物がプラスチック製品でできており、リサイクルをしても追いつかないほど大量のプラスチックが毎日消費される中、地元紙のインタビューで専門家は「リサイクルがプラスチックごみの解決策であるとの考えを改める必要がある」と語り、プラスチック製品の削減や再利用など持続可能な他の手段にシフトすることの重要性を訴えています。

スーパーマーケットの店舗前に山積みで売られている大量のペットボトル飲料水
スーパーマーケットの店舗前に山積みで売られている大量のペットボトル飲料水

カリフォルニアの中でも特にエコロジーの最先端をいくサンフランシスコでは、全米で初めてマイボトルの持参を推進すべく空港内でのペットボトル入りの水販売が禁止された他、マイバックやマイボトルを持参して量り売り販売するスーパーマーケットも増えていると言いますが、プラスチックカップの使用を辞めたり、プラスチック容器に小分けされた商品を極力買わないようにするなど個々で取り組めることはたくさんあります。これまでは「3R」と呼ばれるReduce(減らす)、Reuse(再利用)、Recycle(リサイクル)が環境問題のキーワードになっていましたが、これからはRefuse(不要なものはもらわない、断る)とRepair(修理)を加えた「5R」の取り組みがより求められる時代になってきそうです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)