巨大カジノを有するアメリカ屈指の観光都市ラスベガスは、国内外から年間4000万人もの旅行者が訪れることで知られています。ロサンゼルス(LA)から砂漠の中の街ラスベガスを訪れるには、車でおよそ4時間の運転か、飛行機で小一時間のフライトを利用することになります。長距離バスはありますが、LAとラスベガス間を結ぶ鉄道は運行していないため、LAからラスベガスを訪れるにはほとんどの人が車か飛行機を利用することになります。筆者も何度もラスベガスに行ったことがありますが、自宅を出てホテルに到着するまでのドア・トゥ・ドアで考えると、渋滞を避ければどちらも時間的に大差はありません。同時多発テロ以降は空港のセキュリティーチェックが厳しくなったこともあり、個人的には荷物検査もなく行列に並ぶこともない車を利用する方が断然楽な気がしています。

南カリフォルニアとラスベガスを結ぶ高速鉄道の実現を伝えるメディア
南カリフォルニアとラスベガスを結ぶ高速鉄道の実現を伝えるメディア

そんなLAとラスベガス間に、ようやく鉄道が開通する見通しとなりました。英国の実業家で冒険家のリチャード・ブランソン氏が率いるヴァージン・グループが、南カリフォルニアとラスベガスを結ぶヴァージン・トレインを走らせると昨年末に報じられました。実はこの計画自体は2018年に発表されていたものですが、その後まったく進展がなかったために立ち消えになったのかと思っていたのですが、このほどカリフォルニア開発投資銀行から32億ドルの資金を調達していよいよ今年カリフォルニア側の工事が着工されることになったと伝えられています。運行は2023年になるようですが、実現すれば時速180マイル(約290キロ)で約440キロの道のりを片道90分で移動できるとのこと。渋滞に関係なく、わずか1時間半で気軽に移動できるため、新たな交通手段として大いに期待できそうです。

LAのユニオン・ステーションが始発駅となる見込み
LAのユニオン・ステーションが始発駅となる見込み

北海道から九州まで新幹線で便利に移動ができる日本の人から見ると、LAとラスベガスという大都市間に鉄道がないことは不思議に思われるかもしれませんが、過去に旅客列車が走っていた時期もありました。大陸横断鉄道など全米各地を結ぶ列車を運行するアムトラックがLAとラスベガス間を走らせていたこともあったようですが、採算が合わずに撤退。その後も何度か高速列車を走らせる計画が浮上しましたが、いずれ実現することはありませんでした。しかし、近年はラスベガスを訪れる旅行者が増えているだけでなく、LAからラスベガスに向かう高速道路も渋滞傾向にあり、週末やホリデーシーズンともなると時間帯によっては倍近く時間がかかることもあるため、高速鉄道の必要性が叫ばれていました。

ヴァージン・グループは、この鉄道計画のみならず、ラスベガスの中心地にあるハードロック・ホテル・アンド・カジノも買収。来月3日にハードロック・ホテルはその歴史に幕を下ろし、年末にもヴァージン・ホテル・ラスベガスとなって生まれ変わる予定で、こちらも地元では話題になっています。サンディエゴとサンフランシスコ間でも高速鉄道計画が持ち上がっては立ち消えになっており、カリフォルニアではなかなか高速鉄道計画が進まないのが現実。今回のヴァージン・トレインは無事に工事が始まることを祈るばかりです。

不夜城ラスベガスに鉄道が開通すれば、LAからの日帰り旅行も可能になります
不夜城ラスベガスに鉄道が開通すれば、LAからの日帰り旅行も可能になります

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)