新型コロナウイルスの感染拡大で先行きの見えない不安を抱えているのはここアメリカも同じで、大学が閉鎖されて授業がオンラインに変更されたり、除菌グッズや日用品の買いだめ、外出・外食を避ける人が増えるなど国民の生活にも影響が出始めています。米疾病対策センター(CDC)が、米国内での感染拡大やパンデミック(世界的な大流行)に備えるよう呼びかけたこともあり、日用品や保存食を備蓄しようと買いだめする動きが加速しています。CDCはパニックに陥らないよう警告を鳴らしていますが、持病がある人は薬を充分に確保しておくことや外出ができなくなる事態に備えて日用品や食料を2週間分ほど備蓄すること、大勢の人が集まる場所や風邪などの症状がある人とのコンタクトを避けることなどを呼び掛けています。これに対してここロサンゼルス(LA)でも先週末、多くの人が水やトイレットペーパーなどを求めて大型量販店に殺到。会員制倉庫型店コストコのLA近郊にある店舗の一つでは、駐車場に長蛇の行列ができ、入店するまでに1時間、さらにそこから水やトイレットペーパーの陳列棚まで続く長い行列がレジ付近まで続く事態になったと言います。
前回のこのコラムでもお伝えしたように、ハンドサニタイザー(消毒ジェル)や除菌シート、クリーニング剤、手洗い用せっけんなどは品薄状態が続いていますが、意外なものの需要が高まって生産者を困惑させています。SNSに投稿された「アルコール度数の高いウオッカが消毒液の代用になる」とのデマが拡散したことを受け、ハンドサニタイザーなど消毒液を入手できない人たちによるウオッカの買い占めが起きたのです。中でもテキサス州に本拠地を構えるウオッカ製造会社ティトスの製品を名指しで、「ティトスで家族のためにハンドサニタイザーを手作りした」「ティトスで消毒剤を作る方法」と言った書き込みがSNSで拡散されたことを受け、ティトスは「CDCでは手を洗うためのせっけんと水がない場合には、少なくとも60度以上のアルコールが含まれたハンドサニタイザーで手を消毒するよう勧めているが、ティトスのウオッカは40度しかない」とコメントを出し、飲酒目的以外での購入を自粛するよう呼びかける事態となっています。ティトス側は売り上げが伸びることは歓迎すべきことだとしながらも、効果がまったくないハンドサニタイザーの代りに自社製品が使用されることは遺憾であるとコメントをしています。実際に筆者の近所のストアでも、ティトスの棚は空っぽだったり、残り数本だったりしており、実際に多くの人がデマ情報に惑わされて購入していることがうかがえます。
一方で、同じくSNSでの書き込みが原因で売り上げが激減しているのが、メキシコ産のコロナビールです。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ネット上では名前が同じ「コロナ」つながりであることを理由に、「コロナビールは飲みたくない」「お店でコロナビールは絶対にオーダーしない」と言った書き込みが相次いだことなどから、アメリカ国内での売り上げが38%減少したと言います。メキシコと国境を接するここカリフォルニア、特にLAではコロナビールはどこのお店でも購入できるとてもポピュラーなビールで、軽い味わいが特徴のコロナビールは、これから夏に向けて野球観戦のお供やBBQパーティーなどでも人気があっただけにこれ以上イメージが悪くならないことを願うばかりでしょう。
LA郡では日本への渡航歴がある人の感染が確認されたとの報道もあり、中国人のみならず日本人や韓国人を含むアジア人に向けられる差別も心配されており、日本人が多く住むエリアの日系スーパーでは米やインスタント食品、乾物などを買いだめする人の姿が多く見受けられます。また、LAに3店舗を展開する中華料理のチェーン店シチュアン・インプレッションでは風評被害を避け、安心して食事ができるようにと来店者全員を検温する措置を取って話題になっています。肌に直接触れずにおでこにかざすだけで検温できる体温計を使用し、発熱のある人の入店は断っていると言います。同店によると90%以上の人が協力的だと言いますが、感染が心配な人にはテイクアウトを利用するよう呼びかけ、5%のディスカウントも行っています。LA郡の公衆衛生局長は同郡で市中感染が見られることを理由に持病のある人や高齢者、妊婦を対象に不要不急の旅行や大規模イベント、屋内での会合等への出席を自粛するよう呼びかけており、感染拡大を受けてイベントやコンサートの中止も相次ぐなど出口の見えない新型コロナウイルスの感染拡大は、多くの人を恐怖に陥れているようです。
(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)






