夏の始まりとされるメモリアルデイ(戦没将兵追悼記念日)を25日に迎えたアメリカ。例年ならこの3連休は大勢の人が国内外に旅行に出かけるため、空港は大混雑し、高速道路も渋滞するのが毎年恒例の光景でしたが、今年は新型コロナウイルスの影響で移動が制限されているため、空港も道路もガラガラ。特に今なお不要不急の外出自粛が求められているロサンゼルス(LA)では、娯楽施設やショッピングモールも閉鎖されたままで、「連休もソーシャルディスタンスを守り、同居する家族以外と集ったり、パーティーをせずにできる限り自宅で過ごすように」と求められていたため、利用が認められている近場のビーチやハイキングトレイルに出かける以外は多くの人が自宅でBBQなどをして過ごしていました。
カリフォルニア州内で最も感染者数が多いLAではこの3連休も飲食店は閉鎖されたままで、レストランの多くが自宅で楽しめる「メモリアルウィークエンド特別メニュー」を用意し、家庭で作れるハンバーガーやピザ、BBQセットなどをテークアウトやデリバリーで販売していました。しかし、州内の一部地域では飲食店の再開が認められ、LA南部のオレンジ郡や北部ベンチュラ郡など近隣都市でも店内飲食を再開させる動きが活発化。再開したレストランにはさっそく大勢の人が訪れてにぎわう様子がニュースで伝えられています。
そんな中、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は今月中旬に州内の飲食店再開に向けて新たなガイドラインを発表しました。ガイドラインではソーシャルディスタンスを保つために客同士を少なくとも6フィート(約1.8m)離すようテーブルの間隔を空けることやメニューは使い捨てにすること、利用客は食事中以外は常にマスクの着用を義務付けること、塩コショウなど調味料はテーブルに置かずに必要な分のみ個別提供すること、客が入れ替わる度に消毒を行うことや料理のシェアを禁じることなどが盛り込まれています。ドリンクバーの利用も禁止となるため、ファストフード店などではセルフの飲み物提供を取りやめることも求められています。
また、入店時に検温や体調確認を行うことや一度に同じテーブルに座れる人数を制限すること、同居する家族以外での同席を禁じることなども検討されている他、混雑緩和のために事前に予約することを推奨し、滞在時間を短くするために入店前にオンラインやスマートフォンで料理を注文できるようにすることや店内への入店が認められるまで車内や離れた場所で待機するよう求める案なども出されています。こうした状況を踏まえ、駐車場や店舗前の道路の一部をアウトドアダイニングスペースとして利用できるようにする法案を検討する自治体もあります。すでにオープンしているレストランの中には、客同士が向かい合って座らないよう空席となる座席にドレスアップしたマネキンやぬいぐるみなどを置くなど、この状況を逆手にとって楽しく食事ができるよう工夫する店も出ています。
しかし、再開が認められたとしてもソーシャルディスタンスを確保するためには座席数を減らす必要があり、個人経営の小さな店舗やバーなどにとっては厳しい現状が待ち受けています。また、マクドナルドの従業員が感染対策の不備で集団訴訟を起こすなどしており、雇用主は従業員の安全をいかに守るのかといった課題もあり、フェースガードなどPPE(個人用防護具)の確保など再開に向けて超えなければならない問題もたくさんあります。また、第2波の到来が懸念される中、早期再開に反対の意見も根強いことからレストランの店内飲食が再開しても以前のように客足が戻らない可能性もあり、当面はテークアウトやデリバリーの継続も求められることでしょう。
そんな中、LAにある多くの日本食レストランでは「弁当」という日本ならではの文化を生かしてテークアウトで生き残りをかけて営業を続けています。各店で特色を生かしたテークアウトメニュー作りに取り組んでいますが、「売り上げは80%ダウンと厳しい状況ですが、今が頑張りどころだと思っています。地域のレストラン業界が互いに助け合うべく、メディアや飲料メーカーなどを交えて意見交換の場をもうけ、対策を練っています」とLAで20年以上にわたって豚カツ専門店を営んでいる神楽レストラングループのゼネラルマネジャーの樋口勝弘さんは話しています。LAでは次の祝日になる7月4日の独立記念日を経済再開のゴールとしていますが、今後1カ月ほどかけてさまざまな安全対策を講じた上で再開を目指すこととなりそうです。ワクチンや治療薬が確立するまでは、ウイルスとの共存が求められる中、アフターコロナ時代の新たな日常はこれから始まろうとしています。
(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)