新型コロナウイルスの影響で不要不急の外出自粛が求められ、経済活動が停止してから3ヶ月近くたったロサンゼルス(LA)では、今もなお感染拡大が続き、元の日常には戻れずにいます。ヘアサロンに行けない人たちはオンラインのヘアカット教室に参加し、会合やパーティーはZoomで、自宅でオンラインを利用したエクササイズに励み、卒業式やダンスパーティーもバーチャル、オンライン料理教室で自炊生活を楽しむなど、人々はよりオンラインを活用するようになり、生活も様変わりしています。ウイルスとの共存が求められるウィズコロナ、そしてアフターコロナ時代は、テクノロジーの進化によって人々の暮らしがどのように変わっていくのでしょう。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)でコンピュータサイエンスの博士号を取得し、人工生命の研究に従事するLA在住の仲田真輝さんに話を伺いました。

NeuralX社代表取締役社長の仲田さんはこのほどオンラインフィットネスの世界では初となる人工知能(AI)と人工生命を活用したフィットネスアプリ「プレゼンス」を開発。従来のオンラインによるフィットネスクラスとは一線を画す新しいテクノロジーで、ウィズコロナ時代の新たなプラットフォームとして注目を集めていますが、コロナは「良い意味で社会を壊すインパクトがあった」と話します。

携帯やタブレットがあればどこにいても気軽にフィットネスが楽しめる時代に
携帯やタブレットがあればどこにいても気軽にフィットネスが楽しめる時代に

「人の過ごし方、娯楽のあり方など様々なことが変化していますが、コロナは社会全体が変わらざるを得ないきっかけになったと思います。ワクチンができるまでは不安が残るため、ウィズコロナ、アフターコロナと確実に人々の生活は変わっていくと思います。ワクチンができるまで18ヶ月とも言われていますが、私たちはその長い期間をどのように楽しく過ごすことができるか考える必要があります。自由がない、制約が大きいとフラストレーションの続く毎日ですが、これは必ずしも悪いことばかりではないと感じています。会社に通勤する、対面で会議をする、ハンコを押すことが当たり前だった古き文化からの脱却を余儀なくされた今回の出来事は、社会が変わるきっかけという意味ではプラスの面も多くあります。オンライン会議が増えれば必然的に在宅勤務が可能となって家族と過ごす時間が増えますし、通勤や商談に出向く時間が省けることでその分を余暇の時間にも充てられます。一方で、仕事と家庭のバランスを取ることが難しくなり、オンとオフのスイッチの切り替えという課題も出てくるでしょう」

ニューノーマルではオンラインフィットネスは当たり前になるかも?!
ニューノーマルではオンラインフィットネスは当たり前になるかも?!

パンデミックによって社会的距離を取らざるを得ない現状で、私たちの日常生活は大きく変化しています。

「これからの社会の形としては、オンラインでできることが確実に増えてくると思います。当然、対面でなくてはならないものもあるので全てがオンライン化するわけではありませんが、オンラインでできることやその方が便利なことはよりオンライン化が進むでしょう。良い意味でオンラインとオフラインの両立をはかり、それが社会インフラの充実につながっていくと、私たちの生活はより豊かな未来へと変わっていくと思います。技術革新だけでなく、既存の最先端技術や新たなサービスのアダプテーションも今後は加速すると考えます。AIを含めた今ある最先端の技術をいかにユーザーフレンドリーな形で提供することができるか、サービス革新のようなものがオンラインを中心に起こっていくだろうと予想しています」

「ニューノーマル」という言葉が世界中で使われ始めていますが、ソーシャルディスタンスが当たり前となった今、フィットネスの世界にも変化が求められています。

オンラインフィットネスはアフターコロナ時代の新たなツールとして注目
オンラインフィットネスはアフターコロナ時代の新たなツールとして注目

「自宅で過ごす時間が長くなると運動不足になりがちですが、ソーシャルディスタンスが求められる中でジムに行くことに抵抗感を持つ人も多く、運動習慣の減少は今後問題になってくるはずです。パンデミックによって在宅ワークが日常となり、通勤で歩くことも減った今こそ、運動を意識的に日常生活に取り入れる必要があります。体を動かすだけでなく、心や脳の健康状態を良くすることにも繋がり、心身ともに健康になるために運動は必要不可欠です。フィットネスは健康を奏でる食事、睡眠、運動の三要素であるにも関わらず、時間的な制約などで実践できない人も多く、より身近に簡単で楽しいものとして習慣化することで健康になってもらいたいという願いからフィットネスアプリ「プレゼンス」の開発を始めました。自宅でできて、着替えやシャワーも気にせず、ジムに行く手間も省けることから運動することに対する時間的・精神的なハードルが下がり、楽に続けることができるのがオンラインフィットネスの良さです。しかし、人間は弱い生き物なので一方向配信のストリーミングコンテンツや従来のアプリでは、モチベーションを継続するのは難しいと感じていました。ジムやフィットネスクラスに通うことで得られる外界からの良いプレッシャーは、モチベーションを保つためには重要な要素です。それをオンラインでも実現させるために動作解析、AI、動画通信のテクノロジーを応用することで簡単に楽しく自宅で運動を続けられる環境を提供できるのではないかと考えたのです。このアプリはスタジオで録画した動画をコンテンツストリーミングを使って流し、AIの補助によってトレーナーがビデオチャットでリアルタイムに的確なフィードバックを返すことができるのが最大の特徴で、ユーザーは実際にジムでトレーニングを受けているのと同じ体験が得られます」 

人工生命の研究は人々の生活に今後どのように関わっていくのでしょう。

「人工生命とは身体や脳の仕組み、群衆としてのグループでの動き方という「生命」をいかに実現化できるかが目的の研究です。数十個のモーターで動くロボットの制御とは違い、人間の骨格をモデル化してそこに筋肉を加えて800~900もの筋肉で動く人間の仕組みをコンピューター上で実現する研究を早稲田大学・UCLAにて10年ほど続けてきました。スポーツも繰り返しトレーニングをすることで上手くなっていきますが、こうした人間の筋肉の使い方を覚えさせる仕組みをコンピューター上で実現することも、筋肉シミュレーションの研究の一部です。将来的には、フィジカルセラピーやプロスポーツの世界でも、筋肉のより効果的な使い方やけが予防のためにどこの筋肉を鍛えたら良いかなど人工生命を基に適切なアドバイスができるようになると思います。高齢化社会において弱って歩けなくなる筋肉を鍛えるための一番簡単で効果的なエクササイズを提供することなども可能になります。密になって運動するリスクのある介護現場やリハビリセンターでは、将来オンラインフィットネスが導入されることは良いことだと思います。これから時代はどんどん変わります。固定観念を持たずに人生を楽しんで健康に過ごすことを考えながら、新しいサービスを取り入れてウィズ、アフターコロナを楽しむ社会になることに期待しています」(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真は全てNeuralX社提供)

アプリは15日から利用開始予定。詳細は_www.presence.fit_
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