トランプ米大統領が新型コロナウイルスに感染したニュースは、世界中の人々に衝撃を与えましたが、専門家の警告を無視してマスク着用を拒否し続けてきただけにアメリカ国内では「真剣に受け止めていなかったから」「事態を軽視してきたツケ」など批判が相次いでいます。
反トランプ派として知られるハリウッドセレブたちもSNSで様々な意見を投稿しており、「スター・ウォーズ」シリーズのルーク・スカイウォーカー役で知られるマーク・ハミルは、「もし大統領の感染で何か良いことが生まれるとしたら、彼の支持者たちが考えを改めることではないか。ロックダウンを受け入れ、ソーシャルディスタンスを実践し、誰もがマスクを着用すればウイルスを抑え込めるかもしれない。最初からそうすべきだった」とツイート。
「ハングオーバー」シリーズなどで知られるアジア系コメディアンで俳優のケン・チョンも「科学を否定するな!!!」「マスクを着用しろ」とツイートするなど、適切な感染予防対策を取ってこなかったことを問題視しています。
しかしそんな中、トランプ大統領は入院中だった4日には、病院前に集まった支持者たちを激励するため車に乗って一時外出して車内から手を振るパフォーマンスを行い、車を運転するスタッフらを危険にさらしました。さらに退院した5日もホワイトハウスに戻るなりバルコニーで立ち止まって記者団の前でマスクを外して回復をアピール。スタッフらが至近距離で見守る中での狂気の沙汰としか思えないパフォーマンスに、アメリカのメディアも「ショッキングな出来事」と動揺を隠せません。
自身が感染源となりえる一連の行動にウーピー・ゴールドバーグは、「彼は大統領だから最高の治療が受けられるけど、一般の人は例えお金持ちでもそうはいかない。だから絶対に真似をしないで。マスクを着用して予防して」とトーク番組で訴えていましたが、そもそも感染者は隔離することやマスクを着用することが求められているはず。「大統領であってもウロウロ歩き回ることは危険」と専門家らかも非難の声が出ていますが、アメリカで一般の人が感染した場合のガイドラインはどうなっているのでしょう。
CNNテレビのニュースキャスター、クオモ氏は3月末に感染が発覚した後は、他の家族にうつさないよう地下室に一人でこもってレポートを続けていましたが、感染を広げないために隔離することは基本中の基本です。米疾病予防管理センター(CDC)のガイドラインでは、少なくとも発症と解熱後10日、解熱剤を使用せずに平熱が24時間続くことを隔離の目安にしています。軽症の場合は自宅に留まって検温や体調管理を行いながら自己隔離を続け、回復するまでは外出を避け、公の場に行かないことや他の人と接触しないことなども求めています。
また、感染者と濃厚接触した場合はコンタクトした日から2週間の自己隔離をすることや、自己隔離中は自宅に他の家族やペットがいる場合は室内であってもマスクを着用して感染を広げないようにすることも明記されており、トランプ大統領の行為はいずれもCDCのガイドライン違反と考えられます。
ホワイトハウス内での感染が拡大する原因になったと見られている9月26日に行われた連邦最高裁判事の指名式典では参加者の大多数がマスクを着用せず、隣同士の席に座って密集する会場の映像に違和感を覚えた人も少なくありませんが、報道によると出席者は迅速検査キットによる検査で陰性が確認されているため、マスク着用もソーシャルディスタンスも求められなかったといいます。しかし、迅速検査は偽陽性や偽陰性が発生することがあると指摘されており、それが結果的に感染を広げる要因となってしまったようです。
トランプ大統領や政府関係者らは3月下旬に政府が承認した十数分で結果が分かる迅速検査キットを用いて頻繁に検査を受けていたと言われていますが、一般の人の検査体制はどうなっているのでしょう。米食品医薬品局(FDA)承認の、自宅や職場等で採取した唾液をラボに送り返して24時間以内に結果が分かる検査キットは一般の人も購入するができますが、PCR検査に関しては州や自治体で対応にはかなり差があります。
ここロサンゼルス(LA)では市民は症状のあるなしや濃厚接触に関わらず、市内に設置された検査場で誰でも何度でも無料で検査を受けることができます。検査もドライブスルー方式が主で、ドジャースタジアムなどは1日に6000人の検査が可能で、オンラインで簡単に予約もできます。そのため、仕事柄多くの人と接する人や病院や、介護施設を訪問する際などに頻繁に検査を受けている人もたくさんいます。検査体制の拡充とその後の隔離、半年以上に及ぶ外出自粛命令のおかげで、LAではこのところ新規感染者数は減少傾向にあり、5日はパンデミック以降3番目の低水準となる472人の感染者数に留まっています。
トランプ大統領の感染は来月に予定されている大統領選の行方にも影響を与える可能性があるため、早期の選挙活動復帰も示唆していますが、大統領の言動が「コロナに感染しても大したことない」という危険なメッセージとして伝わらないことを願うばかりです。
(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)






