アメリカではトランプ前大統領に対する2度目の弾劾裁判が9日に上院で始まり、日本では東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の森会長の女性軽視発言を巡って辞任を求める声が高まっていますが、ここカリフォルニア州ではニューサム知事の解任を求めるリコール運動が盛り上がっています。

長引く経済活動自粛で街中には空き店舗が目立つロサンゼルス
長引く経済活動自粛で街中には空き店舗が目立つロサンゼルス

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、カリフォルニア州は累計で全米最多の332万人を超える感染者を記録しており、同知事のコロナ対策への不満が主な要因ですが、コロナ禍で同州が抱えるさまざまな問題が露見したこともリコール運動を後押ししています。高い失業率や高騰し続ける生活費、全米最高の税率に財政赤字、増え続けるホームレス問題などカリフォルニア州が現在抱える問題はどれも深刻で、これらを理由に解任を求める声が高まっているのです。

さらにそれに拍車をかけたのが、住民に不要不急の外出自粛を求める中で昨年11月に高級レストランで行われた自身の政治コンサルタントの誕生パーティーに出席して複数人で会食を楽しんだと報じられたことでした。

ニューサム知事の高級フレンチ会食の様子をスクープした地元FOXニュースの写真(FOX11ニュースより)
ニューサム知事の高級フレンチ会食の様子をスクープした地元FOXニュースの写真(FOX11ニュースより)

カリフォルニア州は全米の中でも厳しい感染予防対策を講じながらも一向に感染者数が減少しない中、自身は予約を取ることが困難といわれる高級フランス料理店に10人ほどで集まり、1人1200ドルといわれるホワイトトリュフとキャビアを含む最高級コースに舌鼓を打っていたことが多くの住民の怒りを買ったのです。日本でも菅首相の8人ステーキ会食が問題になりましたが、ニューサム知事も住民には自粛を求める中でソーシャルディスタンスを無視してマスクを着用せずに大人数で会食する姿にショックを受けた人も少なくなく、この一件以降「リーダー失格」の烙印を押す人が増えたといわれています。

ステイホームで人が消えたサンタモニカの中心地
ステイホームで人が消えたサンタモニカの中心地

カリフォルニア州知事のリコール運動といえば、2003年に現職だったデイビス元知事が同州史上初めてリコールに直面して住民投票の結果解任となり、アーノルド・シュワルツェネッガーが後継知事になったことが記憶に新しいところです。地元メディアの報道によるとカリフォルニア州では前回選挙の獲得票数の12%にあたる有権者の署名を集めることによってリコール選挙を行うことができ、3月17日の期限までに150万人の署名が集まれば住民投票を実施することが可能になるといいます。2月上旬の時点で130万の署名が集まっていると伝えられていますが、署名にダブりがないかや有権者の署名かどうかを州政府が精査するため、実際にリコール選挙を成立させるには200万人の署名が必要だといわれています。

増え続けるホームレスは大きな社会問題に
増え続けるホームレスは大きな社会問題に

そんな中、ニューサム知事は先月末に突如、昨年12月6日から実施していた2度目のロックダウンの解除を発表したことが波紋を広げています。昨秋からの感染爆発を受けてカリフォルニア州では医療体制のひっ迫を理由に自宅待機命令が出されていましたが、この発表を受けて先月29日から飲食店の屋外飲食や美容院の営業が再開されることになりました。一時は集中治療室(ICU)の空き病床がゼロになったロサンゼルスも現在は入院患者数が減少していますが、新規感染者数はいぜんとして多いだけに、今回の緩和は政治的な意味合いがあるのではないかとの声も出ています。ニューサム知事はこの疑惑を否定していますが、2019年1月の就任以来リコール運動はこれが5回目で、今年に入ってからもワクチン接種の遅れも指摘されているだけに今回はリコールが成立する可能性も少なくありません。ニューサム知事にとって、今後はコロナ対策と共に自身のリコール運動にも頭を悩ます正念場の1カ月となりそうです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)