新型コロナウイルスワクチンの接種率が人口の40%を超えたアメリカでは各地で様々な規制が緩和され、自粛生活への反動から「今年こそは」とこぞってバカンスに出かける「リベンジトラベル」という言葉も生まれるなど、急速にコロナ禍前の生活に人々は戻っています。

こんなマスク姿の看板はもう見ることはないかもしれません
こんなマスク姿の看板はもう見ることはないかもしれません

もっとも大きな変化は、ワクチンの接種を完了した人は空港や機内、列車の中、病院など特殊な状況を除いて、屋内外問わずマスクの着用は不要とする新たな指針を13日に米疾病対策センター(CDC)が発表したことです。煩わしいマスク生活からも解放された人々はソーシャルディスタンスも必要なくなり、日常生活を取り戻しつつあります。

カリフォルニアでも6月15日からはマスク着用義務化が解除される予定です
カリフォルニアでも6月15日からはマスク着用義務化が解除される予定です

しかし一方で、「ブレイクスルー感染」という気になるニュースも伝えられています。ブレイクスルー感染とは、ワクチン接種を終えてから2週間たったのちコロナに感染することを意味します。日本でも承認されたファイザー社とモデルナ社のワクチンは、共に90%超の予防効果があると言われていますが、残念ながらワクチンで感染を100%防ぐことはできないことが改めて分かってきました。

CDCがマスク不要と発表したのと同じ日、大リーグのニューヨーク・ヤンキースで選手とコーチ8人がブレイクスルー感染したことは大きなニュースとなり、ワクチン接種完了者の間でも「なぜ今なのか」「怖い」といった声も多く出ています。ワクチン未接種者はマスクを引き続き着用するようCDCは求めていますが、現状では接種が完了したかどうか確認する手段がないため、未接種者でもマスクを外すことは容易にできます。単純計算しても、スーパーマーケットで買い物中に自身の周囲にいる10人中6人がワクチン未接種者となるため、その中をマスクなしで歩くのはやはりまだ勇気がいると感じる人は少なくないでしょう。

ワクチンで100%感染を防ぐことはできないことが判明
ワクチンで100%感染を防ぐことはできないことが判明

では、仮にワクチン接種後に感染するとどうなるのでしょう。CDCは接種後にコロナに感染した人と濃厚接触したことが判明した場合でも、無症状ならPCR検査や隔離の必要はないとしています。つまり、例え感染しても無症状であれば他人に移すリスクは低いということを意味します。ただし、コロナの症状が現れた場合はこれまでと同様に適切な検査を受け、軽症でも他人に移さないよう自己隔離する必要があります。

CDCによると4月末の時点でワクチン接種を完了した人は1億100万人で、このうちブレイクスルー感染が報告されたのは1万300件で、約1万人に1人ということになります。接種後に感染する確率は0.01%とかなり低いため、現時点でブレイクスルーは大きな問題ではないとの見方を示しています。一方、全体の約25%は無症状であるもののおよそ10%が重症化して入院しており、死亡率は2%であるとのデータも発表されています。つまりはブレイクスルー感染後でも10人に1人は重症化するリスクがあるということになります。また、理由は不明ですが女性の方が男性よりもブレイクスルー感染しやすいというデータも出ているようです。5月17日時点で、ブレイクスルー感染後に入院した人は1800人で、350人が死亡したとCDCは発表しています。

抗体は時間の経過と共に消えていくことから、ワクチンの効果も1年程度ではないかと言われており、接種から1年以内に再び接種する必要性についても議論されており、今後はインフルエンザワクチンのように毎年接種が必要になるかもしれません。そうしたことを考えると、ワクチン接種後も当面は公共交通機関や、大規模なイベントなど不特定多数の人と接する場面や映画館など、屋内施設ではマスクを着用した方が安全と言えるかもしれません。また、気を抜かずに引き続き手洗いなど最低限の感染予防を継続することも重要といえるでしょう。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)