アメリカのインフレが止まりません。10月の消費者物価指数の上昇率が、31年ぶりの高い水準となったことは日本でも報じられていますが、ガソリンから食料品、日用品にいたるまで毎日ものすごい勢いで値上がっています。

特に、全米でもっともガソリン代が高いと言われるここカリフォルニア州では、この1カ月の間に平均1ガロン(約3.78リットル)あたり20セント(約23円)以上値上がりしたことがニュースになっていますが、二十数年間ロサンゼルス(LA)に暮らしてきてこれまで1度も見たことのない1ガロン6ドル(約690円)超えの看板を見たときは、開いた口がふさがりませんでしたが、それが今や一部地域では7ドルに迫る勢いにまでなっています。コロナ禍でステイホームになった昨年春にはガソリン需要が激減してLAでも2ドル台だったガソリンが、わずか1年半で倍になったのだから普通ではありません。

場所によっても違いますがLA市内では現在1ガロン5ドル前後
場所によっても違いますがLA市内では現在1ガロン5ドル前後

LAタイムズ紙によると、カリフォルニアのガソリン平均価格は、15日に史上最高となる1ガロン4.682ドル(約538円)を記録し、2012年10月以来となる高値を更新したといいます。ここLAでもわずか1週間で7.9セント(約9円)値上がりし、平均価格は1ガロンあたり4.672ドル(約535円)で、1年前の同時期と比較すると1.52ドル(約175円)も高いと伝えています。12ガロン(約45.36リットル)の車を満タンにするには、日本円で7000円ほどになり、一昔前と比較すると倍になっているため、車社会のLAではガソリンの家計負担が日々大きくなっています。

コロナ禍で精肉の値段が高騰
コロナ禍で精肉の値段が高騰

ガソリンのみならず、日々の生活に直結する食料品などの値上げも止まりません。知り合いが「毎週1回、ほとんどきまって同じ物しか買っていないのに会計時の値段が毎回上がって恐ろしい」と話していましたが、「あれ?この前まで5ドルだったのに、いつの間に1ドルも上がったの?」みたいなことが多々起きています。報道によると、1年前の10月と比較し、平均6.2%物価率が上昇しているといいますが、特に乳製品や精肉の値上がりにはびっくりします。

1000円のオレンジジュースも珍しくなくなり
1000円のオレンジジュースも珍しくなくなり

例えば一般的な大手チェーンのスーパーマーケットで約2リットルのオーガニック牛乳パックが5ドル前後(およそ573円)、約1リットルのオレンジジュースが7~10ドルほど(800円~1000円超え)、オーガニック卵12個入りが5~6ドル、ファーマーズマーケットで売られている平飼い卵なら12個で8ドル前後(およそ920円)、牛肉のミンチ1パウンド(約453グラム)や鶏もも肉1.4キロがおよそ700円前後といった感じです。来週に迫った感謝祭の定番メニューになっているターキーも1羽丸ごと購入すると小さなものでも40ドル(およそ4500円)ほどします。

牛乳や卵といった食品にも値上がりの波が
牛乳や卵といった食品にも値上がりの波が

それ以外にも、例えば外食でラーメンを食べようと思えば普通のとんこつラーメンが1杯15ドル(約1700円)前後しますし、日本食レストランでちょっとしたランチをするなら消費税とチップを入れて30ドル(約3400円)はするという感覚です。ハンバーガーでも10ドル(約1140円)以上はするので、外食するのも気軽にというわけにはなかなかいかない状況になっています。

自宅で作るラーメンキットも2食で2500円ほど
自宅で作るラーメンキットも2食で2500円ほど

コロナ禍からの景気回復に伴う需要の高まりやリベンジ消費に対して働き手不足や物流の停滞などが原因で供給が追いつかない状態が続いていることが主な要因とされていますが、それに加えて世界的なコンテナ不足による海上運賃の高騰やエネルギーの高騰、深刻な人出不足による賃金の高騰なども物価高に拍車をかけています。

これからクリスマスにかけてさらに消費欲が高まり、需要が増すことからさらなる物価の上昇や供給不足が懸念されています。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)