新型コロナウイルスの感染拡大から2年以上が経ち、日本でもようやく夏に向けて屋外での「脱マスク」議論が活発化していますが、ここ数か月ですっかりマスクなしの日常を取り戻したアメリカでは感染の再拡大で再び「屋内での着マスク」が議論され始めています。

今年に入って感染が減少していたアメリカですが、このところ全米のほぼ全ての州で感染が再拡大しており、20日には1日に報告される1週間の新規感染者の平均が10万人を超え、この半月で57%増となっています。特に東部や中西部では米疾病対策センター(CDC)がマスク着用を推奨する水準にまで達していることから、再び屋内でのマスク着用を呼びかける動きも出ています。

週末のLAの公園では大勢の人がマスクなしで集う光景も
週末のLAの公園では大勢の人がマスクなしで集う光景も

CDCは感染のレベルを「低い」「中程度」「高い」に分類しており、中程度の地域では基礎疾患のある人など感染リスクが高い人のマスク着用が推奨されている一方、さらに感染が拡大している地域では屋内の公共施設でのマスク着用を求めています。

アメリカでは現在、すべての州で屋内でのマスク着用義務は解除されており、地域差はあるもののマスクを着用している人は以前に比べて確実に減っています。一方で、「中」から「高」に感染レベルが引き上げられたニューヨークでは、「屋内ではマスクを着用すべき」と保健当局が通達を出し、20日にはブロードウェイ劇場でのマスク着用義務を6月30日まで延長することも決まりました。また、「低」から「中」に引き上げられたロサンゼルスでも20日、空港と公共交通機関などでのマスク着用義務の延長が発表されています。

LAで公共交通機関や空港、駅でのマスク着用義務化が延期されことを伝える記事
LAで公共交通機関や空港、駅でのマスク着用義務化が延期されことを伝える記事

オミクロン株の新たな変異種BA.2.12.1の拡大に伴い、医療現場もひっ迫していることから「まだコロナは終わっていない」と専門家も感染予防の必要性を改めて訴えており、免疫力が低下している人や免疫力が低下している人と同居する人、または感染リスクが高い換気の悪い屋内ではマスク着用と社会的距離を保つことが推奨されています。

また、ワクチン未接種者は感染して重症化するリスクが高いため、マスクを着用するよう求める専門家もいます。一方、健康な人でワクチン2回と追加接種を受けていれば重症化するリスクは低いとされていますが、感染して長期の後遺症に悩まされる人もおり、今後のさらなる感染拡大を避けるためにも改めてマスク着用の必要性が叫ばれています。

日本では屋内屋外問わずマスクを着用するのがマナーになっていますが、現在のアメリカでは屋外でマスクを着用する人はごく少数です。未知のウイルスだった初期の頃とは違い、現在は様々な研究からある程度ウイルスの特性も分かってきているため、屋外でのマスク着用が必要かという問いには疑問を呈する専門家が多いようです。

LAでは現在も入店時に独自にマスク着用を求めるサインを掲げている店舗も多く、屋内でのマスク着用率は半々くらい
LAでは現在も入店時に独自にマスク着用を求めるサインを掲げている店舗も多く、屋内でのマスク着用率は半々くらい

ニューヨーク・タイムズ紙は「マスクが再び必要か」という記事の中で、公園や歩道など屋外でのマスク着用が感染予防に効果があるとの科学的根拠はほとんどないと伝えています。一方、コンサートやスポーツ観戦など人混みにいる場合はマスクを着用する必要があり、頬に風を感じることができない場所は屋外でも換気が悪い可能性が高く、注意が必要だとしています。つまり、屋外で人と距離が保たれる場所ならマスクは不要、人と肩が触れ合うような至近距離にいる場合はマスクを着用すべきというスタンスです。

また、ある専門家は野外コンサートではステージ正面の前方の人が密集する一部エリア以外は、ほとんど感染リスクはないのでマスクは不要との見解も示しています。

では、屋内でマスクが必要かどうかを考える基準はといえば、やはり換気の良し悪しをあげています。天井が高く、空気の流れがあるような場所ではリスクは低いかもしれませんが、狭い空間では、例えばタバコの臭いが空気中に充満するのと同じようにウイルスも空気中に溢れている状態になるため、マスクが必要になるとしています。現在マスク着用は個々の判断に委ねられていますが、今月末にメモリアルデイ(戦没将兵追悼記念日)の連休を控えており、夏休みは多くの人が旅行に出かけることから、これから秋にかけてさらなる感染拡大が懸念されています。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)