新型コロナウイルスの感染拡大以降、2年以上にわたってほぼ鎖国状態にあった日本が、ようやく海外からの観光客の受け入れを再開したことはここアメリカでもニュースになっています。

アメリカはもとより、欧州やアジアの多くの国が早々に「ウィズコロナ」に舵を切って海外からの観光客の受け入れを再開させる中、「日本は厳しすぎる」といった声が聞こえていました。そんな中、「ようやく外国人観光客の受け入れ禁止を緩和し、ガイド付きパッケージツアーを許可した」とメディアでも日本旅行再開のニュースが取り上げられています。

2年ぶりにマスクと海外旅行保険とガイド付きで、海外旅行客の受け入れを始めたと伝えるオンラインメディアの記事
2年ぶりにマスクと海外旅行保険とガイド付きで、海外旅行客の受け入れを始めたと伝えるオンラインメディアの記事

コロナ禍のステイホームの反動から、多くのアメリカ人は国内はもとより海外旅行に出かけるようになっており、「日本に行きたい」という声も聞こえていましたが、今回政府が発表した「団体ツアーに限って」の方針にはがっかりした人も少なくなかったようです。「2年たって観光客受け入れを再開するも、マスク、海外旅行保険、ガイドが必要」と厳しい目線の記事もあるように、今回の緩和を受けて「待ちに待った日本にすぐにでも行きましょう」とは残念ながらならないと思われます。

理由の1つは、やはりアメリカではいわゆるパッケージツアーによる団体旅行というのはあまりポピュラーではないことがあります。クルーズツアーや海外の秘境などをガイド付きで巡るツアーに参加する人はいても、通常の海外旅行にパッケージツアーを利用するのは一般的ではありません。特に若い世代では、自由に滞在先や行程が選べる個人旅行が主流です。それが、常に添乗員が同行するツアーとなると、「監視されているようで窮屈」「好きなところに行けない」と不満に思う人が多いようです。

もう1つの理由は、旅行代金の高さと選択肢の少なさがあると思います。個人旅行ならゲストハウスや民泊を利用するなど宿代をセーブすることも可能ですが、ツアーは宿も日程もあらかじめ決められているのでコストを抑えたい人には不人気です。行きたい土地や旅の目的も人さまざまで、ネットに情報があふれている現代、やはり団体行動で高い旅費を支払うことに抵抗を感じる人は多いと思います。

実際、ネットでいくつか売り出し中の日本ツアーをみてみましたが、京都と東京を巡る14日間のツアーは1人5000ドル超え、10日間でも4000ドル近くと日本円で50万超えが多く、安いツアーでも6日間で20万円ほど。航空運賃の値上がりも影響しているのでしょうが、なかなかハードルは高いように感じます。つい先日もあるアメリカ人が、「円安の今は日本に行くチャンスだと聞いたが、ツアーでは行きたくない」と話していましたが、多くの人が制約のない個人旅行の再開を待ち望んでいることは確かです。

観光目的の入国禁止を解除し、パッケージツアー客の受け入れを再開させたと伝える記事
観光目的の入国禁止を解除し、パッケージツアー客の受け入れを再開させたと伝える記事

そして、もう1つツアー旅行という以外にネックになっているのが「マスク着用」の文言です。アメリカではすでにマスク着用義務は撤廃されており、地域差はあるものの多くの人が屋内でもマスクをつけなくなっている今、旅行中ずっとマスク着用を求められることに抵抗感を示す人は少なくないでしょう。実際にこの話をすると、「観光中ずっとしないといけないの?」と多くのアメリカ人が驚きます。

アメリカもコロナはまだ終息していませんし、ここロサンゼルスでも1日の新規感染者数が8日には6000人を超えるなど、このところ増加傾向にあり、医療体制がひっ迫するような状況になれば屋内でのマスク着用義務化が再開される可能性も取りざたされています。それでも、多くの人がコロナと共存しながら以前の日常を取り戻している今、緩和されたとはいえ日本の水際対策は世界から見るとまだまだ厳しいものに映っているようです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)