現地在住日本人にとって大谷翔平選手の活躍が何よりの楽しみであるロサンゼルス・エンゼルスの本拠地での最終戦を観戦するため2日、久しぶりに球場に足を運びました。

「がんばれエンゼルス!」と日本語が映し出されたスタジアムには空席が目立ちます
「がんばれエンゼルス!」と日本語が映し出されたスタジアムには空席が目立ちます

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、名物のピーナッツ売り(手をあげると売り子さんが通路から席に向かって投げてくれる絶妙なテクニックがうり)がいなくなったり、アプリで席にいながらフードのデリバリーを頼めたり、インフレの影響でビール1杯が15ドル、日本円にして2000円超えだったりと、改めてこの2年の変化を感じる観戦となりましたが、試合は8対3でレンジャーズに圧勝。3番・DHでスタメン出場した大谷選手は、初回のセンター前ヒットで連続試合安打を17に伸ばし、5打数1安打1得点で本拠地最終戦を終えました。第2打席、3打席は三振に終わったものの、バッターボックスに立つたびに会場からは「MVP」コールが沸き起こり、大谷選手の人気の高さも肌で感じた1日になりました。

撮影スポットとして人気の巨大な大谷人形も
撮影スポットとして人気の巨大な大谷人形も

会場には「OHTANI17」のTシャツを着たファンも多く、日本人の姿もたくさん見かけた一方、空席も目立ち、ゲーム開始直後は3分の1も埋まっていないような状況でした。最終的にこの日の観客数は2万6000人ほどで、半分強の観客数だったことが報じられていますが、大谷選手の活躍に沸く一方でチームの低迷もあって観客動員数はこの数年伸び悩んでいます。コロナ以前の2019年シーズンまでは、17年連続で最低でも年間300万人を超える動員数を維持してきましたが、今年は245万7461人に終わったと伝えられています。大谷選手目的で球場に足を運ぶファンも多い一方で、勝利に飢えたファンが20年間優勝から遠ざかっていることに失望していることが観客離れに表れているとも言われています。

かつてディズニーが経営に参加していただけに、入り口では今もミッキーが出迎えてくれます
かつてディズニーが経営に参加していただけに、入り口では今もミッキーが出迎えてくれます

そんなエンゼルスは、8月23日に球団売却を検討する手続きを開始したと突如発表し、ファンの間でも身売りが大きな話題になっています。売却によって優勝を再び狙える強いチームに生まれ変わることを期待する声が多く上がっている一方、現在のアットホームな球場の雰囲気が変わってしまうことや本拠地の移転を懸念するファンもおり、賛否両論あります。

1997年から2003年までウォルト・ディズニー・カンパニーが経営に関わっており、02年にはワールドシリーズ初制覇も成し遂げていますが、オーナーが変わって以降は地区優勝を飾ったことはあるもののリーグ優勝からは遠ざかっています。一方で、同じロサンゼルス(LA)を本拠地名にあげているドジャース(エンゼルスの所在地は実際にはLAではなく、お隣の南部オレンジ郡アナハイムにある)と比較し、例えチームが負けてもファンの行儀の良さや家族連れが安心して観戦できる雰囲気が地元の誇りだと話すファンも多くいます。

本拠地最終戦を終えた大谷選手
本拠地最終戦を終えた大谷選手

実際に両球場を訪れたことがある方なら分かりますが、エンゼル・スタジアムではドジャースファンがするような相手チームに野次を飛ばしたり、敵を応援するファンにブーイングを浴びせるような場面はほとんど見かけません。また、子供連れファンが多いこともあり、緊迫する試合中でも和やかな雰囲気なのも特徴です。ディズニーランドも近く、球場があるエリアもどちらかと言うと治安があまり良くないドジャースに比べて安全な地域にあるという差もあり、客層やファンのマナーの違いは明白です。そのため、エンゼルスファンは、チームが買収された暁には再びチーム名が「アナハイム・エンゼルス」に戻ること(現オーナーが買収後に05年にロサンゼルス・エンゼルスに変更)も期待しています。

家族連れが多くアットホームな雰囲気が人気のエンゼルスタジアム
家族連れが多くアットホームな雰囲気が人気のエンゼルスタジアム

地元ファンにとって目下の関心ごとは、新たなオーナーがチームを移転させると言い出さないかどうか、そして身売りをきっかけに再び優勝を狙えるようなチームになれるかということ。最終戦を一緒に観戦した友人たちも、20年も優勝できないチームや老朽化が見えるスタジアムをきれいにするためにも売却は必要だと述べており、多くのエンゼルスファンが新しいオーナーのもとで来季こそは優勝に絡むような快進撃を見せてくれることに期待を寄せています。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)