“アカデミー公式シェフ”ウルフギャング・パック氏に聞いた「ガバナーズ・ボール」今年の料理は

今年もアカデミー賞授賞式の季節がやってきました。95回目となる今年は、12日にハリウッドのドルビー劇場で行われますが、授賞式と並んで毎年話題になるのが、授賞式後に行われる恒例のアフターパーティーです。

授賞式当日はロサンゼルス（LA）各地でたくさんのアフターパーティーが行われますが、公式パーティーは「ガバナーズ・ボール」だけです。ガバナーズ・ボールは、授賞式会場に隣接する複合施設オベーション・ハリウッドの最上階にあるグランド・ボールルームで行われます。ガバナーズ・ボールに参加できるのは、授賞式に出席したゲストだけで、まさに受賞後にオスカー像を手にしたスターや監督たちが最初に祝杯を上げるパーティーです。

大物スターであっても、ノミネートされたり、プレゼンテーターを務めない限り出席できない超プレミアなガバナーズ・ボールとは、一体どんなパーティーなのでしょう。

: ガバナーズ・ボールのキッチンには当日スターたちに振舞われる料理のディスプレイが

会場となるグランド・ボールルームは普段から立ち入りが禁止されたエリアで、一般の観光客らが会場のある5階エリアに近づくことはできません。もちろん、会場の設置などオスカーの準備期間が始まると、なおさら警備は厳重となり、5階にアクセスするエスカレーターの前には警備員が配置され、そのエリアに入場するためのパスを持たない人は立ち入りができません。例えプレスでも、適切な取材パスがないと入れてもらえないほどの制限区域になります。

当日は、ドルビー劇場で授賞式が終了すると参加者たちは続々とガバナーズ・ボールに移動します。午後5時から始まる授賞式が終わるのは夜8時。ゴールデングローブ賞とは異なり、食事をしながらの授賞式ではないため、お腹を空かせたセレブたちはまずガバナーズ・ボールに立ち寄って腹ごしらえをすることになります。

料理をふるまうのは、アカデミー公式シェフの異名を持つセレブシェフ、ウルフギャング・パック氏です。ビバリーヒルズのスパゴをはじめ、ステーキハウスのカットなどセレブご用達レストランを世界中に展開する超有名シェフで、オスカーの料理を担当するのは今年でなんと29年連続となります。

: パック氏によるとピザも人気があるそうです

スターの多くがパック氏の料理の大ファンであるため、ガバナーズ・ボールでもパック氏の料理を楽しみにしています。そんなパック氏が今年、準備中のキッチンで特別に取材に応じてくれました。パーティーでどんな料理が出されるのか、潜入してきました。

パック氏によると、今年は35種類の料理と特製デザートを用意しているとのこと。メニューを見せていただくと、ステーキからスモークサーモン、タコス、ピザ、チキンホットパイ、ツナのタルタル、エビのてんぷら春巻き、ミニ和牛バーガーなどなど美味しそうな料理がずらりと並んでいます。もちろん、シャンパンやワイン、カクテルなどアルコールもたくさん用意されています。

定番メニューだけでなく、新作として今年はロンドンから来たシェフが、本場のフィッシュ＆チップスを振舞うそうですが、「みんな毎年、スモークサーモンは？　チキンホットパイは？　と聞いてくるので、人気の定番メニューは外せないんです。でも、もちろん、新しいメニューもありますよ」とパック氏。一番のおススメを聞いてみると、「宮崎牛」と笑顔を見せ、大きな肉のかたまりを見せてくれました。

: 宮崎牛を前に笑顔で取材に応じるパック氏（右）

「舌の上でとろけて、肉のうまみがあって本当に美味しい」というパック氏は、宮崎牛の大ファンで、世界中の自身のレストランでメニューに取り入れており、オスカーでも2018年からメニューに採用しています。今年は小さくカットした宮崎牛を軽く焼き、シンプルにポン酢ソースで味わってもらう予定だと言います。

パーティーにはおよそ1500人が招待されており、35種類のメニューそれぞれ500～600人分を用意するそうです。料理を手掛けるシェフの数は120人にも及び、日本人シェフもおり、さしみやうなぎなど日本食も提供されると言います。さらに当日は、600人のウェイターやウェイトレス、バーテンダーが接客を担当し、ゲストをもてなします。

本番まで4日となった8日、キッチンにはたくさんの食材が搬入され、スタッフたちも忙しそうに準備に追われていました。メディア向けに実際にスターたちに提供される料理もお披露目され、オスカー像の形にカットされたスモークサーモンやロブスター、美しいデザートも並んでいます。

: オスカー像の形をしたスモークサーモンは定番の人気メニュー

盛大なパーティーに相応しく、使用される食材の量も半端ではありません。カリフォルニア米約23キロ、卵2000個、180キロ以上のスモークサーモン、地鶏約230キロ、ポテト45キロ、さしみ用マグロ136キロ…などなど。たくさんの食材が今年も用意されているそうです。デザートもペイストリーからチョコレート、アイスクリームまで30種類以上あり、オスカー像の形をした特製チョコレートは3000個用意しているそうです。