アメリカ在住の日本人にも人気の生活用品小売り大手ベッド・バス・アンド・ビヨンドが先月、経営破綻し、日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条の適用を申請したことが話題となっています。全米展開するベッド・バス・アンド・ビヨンドは、キッチン用品や寝具、生活雑貨全般を扱っていることから引っ越し時の買い物などで多くの日本人がお世話になっており、ニューヨークに移住した小室眞子さんもマンハッタンの店舗で買い物する様子がパパラッチされたことで知られています。

経営破綻したベッド・バス・アンド・ビヨンド
経営破綻したベッド・バス・アンド・ビヨンド

ここロサンゼルス(LA)にも複数の大型店舗があり、アマゾンをはじめとするオンライン小売業の躍進でネット通販が主流となる以前は、日用品や生活雑貨を買い求める人たちでいつもにぎわっていました。しかし、ネット通販の台頭に太刀打ちできず、数年前から店舗閉鎖やリストラなどで経営再建を図ってきたものの、オンライン投資をほとんど行っていなかったことがあだとなり、経営破綻せざるを得ない状況だったと伝えられています。

物価の高騰が続き、景気後退の可能性がささやかれる中、ベッド・アンド・バス・ビヨンド以外にも今年に入って大手小売りチェーンの倒産が相次いでいます。1月にはパーティー用品専門のパーティー・シティー、2月にはディスカウント小売りチェーンのチューズデー・モーニング、4月にはウエディングドレス販売の大手デイビッド・ブライダルが破産申請をしています。さらに今後、アパレル大手GAPや映画館チェーン大手AMCエンターテインメント、ドラッグストア大手ライト・エイド、大手百貨店コールズなども経営破綻する可能性が取り沙汰されています。

巨額負債を抱えて経営破綻のうわさもある映画館チェーン最大手のAMC
巨額負債を抱えて経営破綻のうわさもある映画館チェーン最大手のAMC

コロナ禍で人々の生活スタイルが変わり、消費に対する心理や行動が変化したことで小売店への客足は鈍化し、売り上げは減少する一方ですが、人件費や光熱費、輸送費などの経費は高騰。借金は膨らむ一方ですが、金利が高すぎて借り入れもできなくなったことが要因にあげられています。また、ガソリンや食料品の高騰で生活必需品以外の支出を抑える人が増え、財布のひもが固くなっていることも売り上げ減につながっていると指摘されています。

こうした流れは、かつて多くの人でにぎわった大型ショッピングモールにも波及しており、小売業の崩壊に伴ってショッピングモールも衰退の一途をたどっています。大手百貨店のノードストロームは今夏、客足の低迷や治安などを理由にサンフランシスコのショッピングモールからの撤退を表明しており、今後も撤退や閉店する企業が増えることが予想され、ショッピングモールも存続が厳しい時代になっています。

コロナ禍以降、ロサンゼルスの繁華街でも空き店舗が目立っています
コロナ禍以降、ロサンゼルスの繁華街でも空き店舗が目立っています

2025年までに現在アメリカにあるショッピングモールの4分の1が消えるとも言われ、今後10年でさらにその数は減り、2032年には全米で150ほどの施設しか生き残れないとの報道もあります。80年代には2500の施設があったとされるモールは、22年には700まで減り、郊外では今後もモールの閉鎖ラッシュが続きそうです。

さらに今後5年で衣料品や家電製品を扱う店の多くが消える可能性も取り沙汰されており、小売企業にとっては生き残りをかけた戦略が求められています。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)