ロサンゼルス(LA)の人気バー9店舗で、現地のミレニアル世代に焼酎を楽しんでもらうイベントが開催され、初日から大勢の人で賑わいました。

大勢の地元の人たちで賑わう焼酎ナイトの会場
大勢の地元の人たちで賑わう焼酎ナイトの会場

アメリカではアジア系の多いLAを含めまだまだ日本の本格焼酎の認知度は低く、一般にほとんど知られていないのが現状です。一方で、カリフォルニア州では昨年10月に「アルコール飲料規制に関する法律」の改正があり、アルコール度数24度以下の焼酎はビールやワインと同じカテゴリーに分類されることになり、普及の追い風になると期待の声が関係者からは上がっています。

これまではビールやワインなどソフトリカーの販売免許しかない飲食店の焼酎販売は認められていませんでしたが、これによってハードリカー(ウィスキーやウォッカ、ラムなど蒸留酒)の販売ライセンスがない店舗でも焼酎が提供できるようになりました。また、発音が似ていることから混同されがちだった韓国の伝統的な蒸留酒「Soju(ソジュ)」との区別化が明確となったことも大きな進歩といわれています。カリフォルニアでは、アルコール度数が24度以下のソジュはソフトリカーとして販売することが1998年から認められているため、日本の焼酎もアルコール度数を24度以下にした上で、商品ラベルに「ソジュ」と記載するケースもあり、これまでこの2つは一緒くたにされてきた歴史があるからです。ちなみに、日本酒はワインやビールと同じソフトリカーのカテゴリーに分類されています。

Sojuではなく、「Shochu」の名で堂々と販売できるようになった焼酎は、今まさにメディアやバー関係者からも注目を集める新しいスピリッツで、日本産農林水産物・食品を現地の一般消費者に普及・浸透させるための取り組みを行うJFOODOが今回LAで開催した1カ月間にわたる「焼酎マンス」と題したイベントも現地メディアで紹介されるなど、大きな注目を集めています。

今回のイベントは、アメリカで取り扱いのある10蔵14銘柄から参加する9つのバーがそれぞれ選んだ焼酎を使い、ハイボールとカクテルを各1種類ずつ開発して提供するというもの。バーごとにまったく異なるオリジナリティ溢れるドリンクが楽しめるのが特徴です。また、同時に日本のミクソロジストの第一人者として知られる南雲主于三(なぐも・しゅうぞう)氏を招き、1月18日から1週間、日替わりゲストバーテンダーとして9つバーすべてを回ってこのイベントのために開発した焼酎カクテルを提供する「焼酎ウィーク」と題したイベントも行われました。

Death&Coのミクソロジストのマシュー・ベランガー氏と南雲氏(左)
Death&Coのミクソロジストのマシュー・ベランガー氏と南雲氏(左)

キックオフイベントとして、18日にはLAダウンタウンにある世界的にも評価の高いバーDeath&Coで焼酎ナイトが開催され、バー独自のオリジナルのカクテルとハイボールに加え、南雲氏が開発した旭万年星をベースにコーヒーリキュールやシェリー酒アモンティリャードをミックスしたカクテル。だいやめをベースにジンやグリーンティー、パッションフルーツなどを使ったさわやかなフィズが振舞われました。

LAの人気バーDeath&Coが開発した焼酎ドリンク2種と南雲氏のカクテル2種
LAの人気バーDeath&Coが開発した焼酎ドリンク2種と南雲氏のカクテル2種

この日は一晩で約150名が参加し、260以上の焼酎ドリンクが提供される大反響となりました。また、24日の焼酎ウィーク最終日は、南雲氏の登場前からカクテルを楽しみにしていた人で溢れ、最後の店舗ではわずか30分でカクテルが完売する大盛況だったといいます。

南雲氏によると、焼酎を飲むのは初めてというお客さんも多かったそうですが、参加した人たちからは「おいしかった」との声をもらい、Shochuという新しいスピリッツを体験する良い機会になったようです。

日本では、ロックや水・お湯割りなど焼酎そのものの香りや味を楽しむのが一般的ですが、他のスピリッツやリキュール、フルーツとの相性も良く、焼酎カクテルという新しいジャンルの飲み物として今回、筆者もとてもおいしく南雲氏のカクテルを楽しませていただきました。

南雲氏が開発したコーヒーリキュールやココナッツクリームなどを使ったカクテル「カフェ・ブルーノ」
南雲氏が開発したコーヒーリキュールやココナッツクリームなどを使ったカクテル「カフェ・ブルーノ」

焼酎のうまみを楽しむためにもカクテルは邪道という声も聞かれますが、アメリカで現地の人に楽しんでもらう入口として、焼酎ハイボールやカクテルを普及させる取り組みは理にかなったものであると今回改めて感じました。次回のコラムでは、南雲氏に伺ったそんな焼酎をアメリカに伝授するためのお話をご紹介したいと思います。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)