東金駅は東金線の中心駅であり、東金市の代表駅。古い駅舎が健在だが、地上駅舎が線路の西側にしかないのに「西口」と「東口」があるユニークな構造が目を引く。駅周辺を散策後は、東金線の終点である成東駅に向かい歴史に触れたが、全国的な傾向となっているバスとの競合という現実にも触れることになった。(訪問は3月27日)


東金駅は木造駅舎が健在。駅舎としての開業は明治期。いつのものかは分からなかったが、2面2線のホームの他に、かつて貨物用だったと思われるホーム跡が残っており歴史を感じる(写真1、2)。自動改札があり、有人駅でもあるが、きっぷの販売は自動券売機と指定席券売機に委ねられており、みどりの窓口はない。

〈1〉木造駅舎が健在の東金駅
〈1〉木造駅舎が健在の東金駅
〈2〉発車時の様子
〈2〉発車時の様子

ホームの移動は跨(こ)線橋で行うが、列車交換(すれ違い)設定のない昼間の時間帯は駅舎側のホームのみを使用するので、私が訪れた時間は入れないようにしていた。おもしろいのは跨線橋の向こう側に、もうひとつ跨線橋があることだ。こちらは常時使用できる。というかホームにはつながっておらず駅舎の外側につながっている。もともと駅舎が線路の西側にしかないため、東側に行くには大変不便である。(写真3)

〈3〉昼間は使用されないホーム内の跨線橋。その向こうに駅の外をまたぐ跨線橋がある
〈3〉昼間は使用されないホーム内の跨線橋。その向こうに駅の外をまたぐ跨線橋がある

「駅前」に住んでいるのにホームまで、とてつもなく遠いという構造は日本各地で見られる。当時は橋上駅舎という考え方が薄いため、まずはこのような形でスタートし、駅の両側からの利用者が増えると橋上化などの改築を行ってきた。無人化されたローカル線では駅舎と反対側ホームに出入り口を作ることもあるが、東金は無人駅ではない。そこで線路をまたいで跨線橋で結ぶことにしたようだが(跨線橋ができたころは当然券売窓口もあったはず)、跨線橋を降りた場所にもロータリーがあり、駅舎に直接入れないのに「東口」と呼ばれているのがユニークである。ちなみに60年前まで私鉄の九十九里鉄道の始発駅だった。(写真4)

〈4〉ロータリーはあるのに駅舎はないユニークな構造。「東口」と呼ばれている
〈4〉ロータリーはあるのに駅舎はないユニークな構造。「東口」と呼ばれている
〈5〉ランチは中華とビール
〈5〉ランチは中華とビール

駅近辺を散策しながら昼食。中華料理のお店に入り、例によって昼からビールである。(写真5)

そして終点の成東駅へと向かう。

〈6〉総武本線との接続駅で東金線の終点でもある成東
〈6〉総武本線との接続駅で東金線の終点でもある成東
〈7〉0番線のある成東駅。案内の仕方がユニーク
〈7〉0番線のある成東駅。案内の仕方がユニーク

総武本線との接続駅でもある成東は、全国でも少なくなってきた「0番線」を持つ。切り欠きとなる、そのホームを利用するのが東金線。駅舎はリニューアルされているが、乗り場の案内は年季を感じるものだ。駅舎を出ると、終戦のわずか2日前、米軍の機銃掃射を受け42人もの犠牲者を出した成東空襲の慰霊碑がある。(写真6~10)

〈8〉0番線は切り欠きホームとなっている
〈8〉0番線は切り欠きホームとなっている
〈9〉アップデートを繰り返しているとみられるのりば案内
〈9〉アップデートを繰り返しているとみられるのりば案内
〈10〉成東空襲の慰霊碑
〈10〉成東空襲の慰霊碑

佐倉まで総武本線を乗り鉄した後は特急で東京に戻る。首都圏の電車は普通や快速のグリーン車に乗る楽しみがある。私はSuicaを持ち合わせていないので、長年休眠中だったPASMOを携行し都内で2000円チャージして備えたが、先にやって来たのは特急だったので、そちらに乗車。18きっぷでは特急に乗れないが、おでかけパスなら乗れるのである。150円高いが車内はグリーン車並みに快適だったし(要はガラガラだった)、当然ながらスピードが全く違う。そして何よりも私は「しおさい」に乗ったことがなかったのだ(笑い)。(写真11~13)

〈11〉佐倉駅の橋上駅舎
〈11〉佐倉駅の橋上駅舎
〈12〉特急「しおさい」で東京に戻る
〈12〉特急「しおさい」で東京に戻る
〈13〉特急券は950円
〈13〉特急券は950円

さて東金駅付近をウロウロしていて気づいたのだが、東京駅までの高速バスとJRは競合関係にあるようだ。現在はコロナ禍でダイヤも変わっているようだが、朝夕はバスも頻発され、料金は若干バスが安い。最終バスも遅めの設定(料金は高くなる)で、バス側がJRを意識していることがよく分かる。所要時間については往路と復路で少し違う上、渋滞もあるので鉄道の方が確実かもしれないが、乗り換えなしで行けるのが大きい(JRの東京直通は1日1往復)。また定員にならない限り必ず座れる。高速道路網の発達とともに全国で見られる光景をここでも見ていた感がある。

〈14〉東金の駅名標。東金線単独3駅は簡単には読めない
〈14〉東金の駅名標。東金線単独3駅は簡単には読めない

それでも東金線には、ようやく乗れたという感でいっぱいだった。大網(おおあみ)から始まって福俵(ふくたわら)、東金(とうがね)、求名(ぐみょう)、成東(なるとう)。大網は読めるだろうが、他はなかなか一発で正解が出ない難読駅がそろっている。東京から1時間ちょっとで行けることを考えると、なかなか魅力ある路線である。(写真14)【高木茂久】