福島・相馬沖には大きなヒラメの巣があるようだ。岩手~福島・東北の太平洋側は座布団級が舞いとんでいる。特に福島・相馬沖では仕掛けを落とせばヒットする入れ掛かり状態。福島県では50センチ以下はリリースするルールがある。釣れる個体でソゲ級が少ないのも事実だ。釣り経験が浅くても、デカいヒラメを釣るチャンス、相馬沖なら十分ありますよ。

福島・相馬港。風光明媚(めいび)で知られる浅瀬・松川浦に隣接する港だ。道路はまだ造成中で、7年7カ月前に発生した東日本大震災の津波の傷痕はまだ深く残っている。ただ、陸上の様子とは違って、相馬沖は震災前の魚の宝庫に戻ってきた。

松川浦から延びる相馬沖に注目する木村尚(たかし)さんに同行してもらった。日本テレビ系「ザ!鉄腕!DASH!!」にレギュラー出演する“海の先生”だ。「豊かな浅瀬があるから、相馬沖は魚も豊富なのですよ」と木村さんは解説する。

相馬港「賀都屋明神丸(かどや・みょうじんまる)」では、9月からヒラメの釣果があがってきた。寒流にさらされ、身の厚い個体ばかりだ。福島県ではヒラメの保護を目的に50センチ以下は、釣れても放流するきまりをつくった。ただ、その50センチ以下はほぼいなくて、釣れるヒラメは60センチ以上ばかりなのだ。

木村さんは「もう少しちゃんと伝えないとダメ。福島第1原発が近いから食べられないと勘違いしている人が多すぎる。細かく放射性物質の残留検査もしてるこの地区のヒラメは、もっとも安全かもしれないですよね」と話し「もっと、もっと素晴らしい魚が釣れて、食べたらおいしいということをアピールしないといけない」。相馬沖のヒラメ、本当においしいのだ。

今回は、木村さんの知り合いでフードコーディネーターの西原佳江さんもサオを出した。最初は釣れなかったが、周囲をみると、オモリが着底してから1メートル浮かして釣っていた。佳江さんも、おそるおそるリールを巻いて、タナを高くした。すると、サオ先が激しく震動して一気にハリ掛かりした。

ヒラメは浮かした仕掛けに飛びついて、エサの活イワシをガブリ。すぐに反転するため即ヒットとなる。俗に「ヒラメ60」などとアタリから60秒待って合わせる通説とは逆だ。佳江さんは50センチのベニヤ板を合わせなくても分かる大きなヒラメをゲットした。

タコボウズ記者も試しにどこまで食うのか仕掛けを浮かしてみた。1・5メートルでもヒット、2メートルでもガツン、2・5メートルもガッチリ食った。

木村さん 海底に潜っているとヒラメの跳躍力には驚く。5~6メートル上を泳いでいる小魚をくわえちゃいますからね。まだ、タナを上げられる。

結局、木村さんと佳江さんで20匹以上を釣って、納竿30分前には「釣れ過ぎちゃうから、やめときましょ」と海を眺めていた。その夜、民宿も経営する賀都屋で釣ったヒラメでしゃぶしゃぶ、煮付け、フライと舌鼓を打った。木村さんも「これまで刺し身ばかりだったけど、どれもおいしいね」と大満足だった。

翌朝は木村さんにあこがれる菅野優くん(10)と、親戚のおじさんで、木村さんと同じ名前の菅野尚さん(67)の操舵(そうだ)するボートで松川浦をまわった。「アマモも増殖している。浅瀬としての機能が復活してきているようです。小魚が育って、沖のヒラメも元気なんでしょう」と木村さん。ボートを降りてから優君と護岸からハゼ釣りをして30分で20匹以上を釣り上げた。

木村さん いい循環ができている。今後もみつめていきたい。

おいしいヒラメを釣るなら、今の福島を堪能できる相馬沖をお忘れなく。【寺沢卓】

▼船 福島・相馬港「賀都屋明神丸」【電話】090・2609・6022。ヒラメ乗合は午前4時半出船、活エサ付き1万1000円。日程は要確認。