4年前の試し釣りから千葉県の砂浜で展開してきた「ちょい投げ房総族」が、来年2020年は、10万人を集客する「東京湾大感謝祭」の現場イベントになることが決定した。これで来年10月は毎週末、東京湾で「何か」が実施されることになりそうだ。来秋は東京湾をどっぷり堪能してみませんか?
12月16日、ある決定がなされた。あの「東京湾大感謝祭」の千葉会場として「ちょい投げ房総族」が認可されたのだ。この日は東京湾大感謝祭の今年の反省会と来年の新規実施について討議される定例会が都内で行われていた。
横浜市を会場とする「東京湾大感謝祭」は今年、会期と会場が2つに分かれた。10月17日と19~20日が大さん橋ホール、同26~27日は赤レンガ倉庫だった。前年は大さん橋も赤レンガ倉庫も同日開催だったが、今年は大さん橋が日程を合わせられずに赤レンガ倉庫より泣く泣く1週間早く開催する苦肉の策をとった。
東京湾大感謝祭は「東京湾の再生」を旗印に「海にいいこと、やさしいこと、はじめよう」をテーマとするイベントだ。
官と民がタッグを組んで海をきれいにして活用していく“きっかけ”を問いかける内容だ。今年が7年目。苦肉の5日間開催が2週にわたったことで宣伝効果も生み出し、計10万1000人もの入場者を記録した。
企業や民間団体、国の省庁、東京湾に面した自治体がブースを出して、パネル展示をした。乗船体験やハゼ釣り教室を実施して、江戸前フードを食べて飲んで、海に関連したレジャーなどの紹介をしつつ、海への廃棄ゴミの削減案や首都圏にふさわしい東京湾を創出するために「感謝」という言葉を用いてタイトルとしているのだ。
一方の「ちょい投げ房総族」は千葉県の砂浜利用をちょい投げで提案している。砂浜が活用されるのは7月初旬から8月中~下旬の海水浴だけ。それ以外の300日以上は、近所の人が犬の散歩に訪れるぐらいだ。砂浜は国有地なので、何をしても自由。だったら「釣りをして千葉県を堪能しよう」というのがそもそもの発想だった。
2015年12月12日、場所を移動しながら試し釣りをした。館山「マリンスポット釣吉」で安い投げ釣りセットを購入した。結果、砂浜から沖に10メートル前後の短い距離でシロギスを中心に簡単に釣れた。釣り未経験者の「はじめの1歩」にもってこいになると踏んだ。
釣吉の横溝健次代表は「安い投げ釣りセットが1番の売れ筋。これが3000円前後。けっこう毎年同じ人が購入していく。3000円の出費は旅行では気にならないのかもしれない」と話した。ならば、投げ釣りをイベント化して、MYザオを持ってもらおうと準備を始めた。
釣りに興味はあっても、なかなか踏み出せない層に響いたようだった。砂浜が会場なので、当然船酔いがなく、時間に遅れても参加できて、初期投資が5000円以内で手ぶらでできちゃう。教えるコーチも配置したことで、購入したサオを握って10分後には魚を釣ることも可能だ。
今年は11月2、3日の土日に鋸南町の保田海岸で実施した。2日間で延べ103人が参加して、南房総市・岩井の民宿に32人が宿泊した。大盛況だった。
ちょい投げ房総族は東京湾フェリーが運営元になっている。神奈川・久里浜と千葉・金谷を約40分で結ぶ定期航路だ。「千葉での宿泊観光を楽しんでもらいたい」という思いがある。南房総エリアの富津市、鋸南町、南房総市、館山市、鴨川市の4市1町で構成する宿泊・滞在型観光推進協議会も「ちょい投げ房総族」を後押ししてくれている。官民一体のイベントとして、東京湾大感謝祭と近しい活動をしているのだ。
今年の「ちょい投げ房総族」には、東京湾大感謝祭で現場を取り仕切る「PT長」を務める「海のおじさん」こと海洋環境専門家木村尚(たかし)さん(63)が初めてフル参加した。木村さんは「こういう東京湾を肌で感じるイベントはすてきですね。最後はゴミ回収をして、来たときよりも砂浜をきれいして帰る姿勢も素晴らしい」と絶賛した。
その縁もあって、東京湾大感謝祭の千葉会場として「ちょい投げ房総族」に白羽の矢が立った。来年の開催は大さん橋会場の1週間前の10月10、11日に設定した。
さらに東京湾フェリーで「ちょい投げ房総族」を統括する寺元敏光取締役(56)からこんな提案が飛び出してきた。
寺元さん そこまで来年10月を東京湾大感謝祭で染めるなら、ウチのフェリーで東京湾を1周しましょう。10月4日(日)に。東京湾をぐるんと船から陸地を眺める経験なんかなかなかできないでしょうから。
500人以上を乗せて「東京湾大感謝祭」のノボリを立てて、艦内放送で木村さんが湾内の解説をする。東京湾で釣れた魚の料理をフェリーの中で食べられるメニューも開発できたらおいしくて、面白い。
これで来年10月の週末は東京湾をぐるんと1周する感謝祭を楽しめる。まだまだ、秘密兵器も用意してある。2020年は東京五輪が終わっても東京湾大感謝祭でまるっと楽しめますよ。【寺沢卓】