山梨・西湖のヒメマス釣りが20日、解禁となった。通常なら10月1日からだが、コロナ禍で5月を禁漁とした分、地元西湖漁協は6月1~10日を春の特別解禁とした。秋も特例で少し早めた。日刊スポーツ指定「白根」(渡辺安司店主=62)でも「ヒメ始め」を楽しもうと、多くの釣りファンが訪れた。その日によって遊泳層が違う獲物を探り当てるのが魅力。エサ釣りやトローリングで、20センチ超級を主体に上限の30匹を記録する人も出た。同日解禁となったワカサギとともに、秋冬シーズンは12月31日まで楽しめる。

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気まぐれな「おヒメ様」は上ずっていた。湖底まで約50メートルはある西湖の、水深10メートル付近の表層で群れていた。腹の虫の居どころによって、底に潜ったり、湖面にまで浮いたりする。「どの深さにいるか」を探り当てる。これこそ、ヒメとご対面できるためのコツだ。

物見堂で、5本のサオを出してエサ釣りをしていた窪範仁さん(45=相模原市)は12本針に多点掛けも含め、18~24センチを21匹釣り上げた。「1本は底べったりでワカサギとの両狙い。その他のサオで10~40メートルと幅広く探った。アタリがなければ5メートル刻みで上げ下げしていた」という。

プランクトンや小さなワカサギなどを捕食し、約30分から1時間ほどで回遊してくる。大きなサイズほど食い気を出すと浮く。セオリー通りで、朝8~9時には入れ食いとなった。最後はすべてのサオを10メートルに統一して、数を伸ばした。

針に掛かると底へと逃げるだけではない。釣り人をたぶらかすかのように上へと食い上げる習性が、ヒメにはある。「15号のオモリだと軽い。食い上げて暴れると、仕掛けをグチャグチャにされた」(窪さん)。慣れてないと、一瞬軽くなってバラしたと思うかもしれない。サオのしなりや獲物の重さを確認しつつ巻き取れば、確保できる。また、20~25号と重めのオモリも持っておけば、食い上げされても困らない。

トローリング組では、堀内章さん(甲府市=71)が溶岩帯付近のやはり水深10~15メートルで18~25センチを24匹釣った。「例年なら15センチ前後の小型も食うが、今年は型がそろっていた。薫製にして近所に配ります」と笑顔を見せた。この日最大となる30・5センチを含め、制限の30匹に到達した花上輝雄さん(山梨県大月市=62)も、「雨が時折降りしきった午前11時ごろまで表層で活発だった」と話した。

解禁初日の水温は21度。「まだ高い。あと2度下がって、10度台になれば活性は高くなる。夏が暑かったのが幸いしてプランクトンが多くなり、ヒメマスの成長がいい。今は群れも散らばって、タナ(魚の遊泳層)もバラバラだが、気候が安定すれば条件は良くなる」と、渡辺店主は期待している。

【渡辺店主のヒメマス釣りアドバイス】

◆水深 水深計がない場合、仕掛けを底まで落としたらリールを巻き上げ、巻いた数を記憶する。2回目は、その半分の数だけ巻き上げれば、宙層で仕掛けを止められる。

◆ボートを揺らす 風があったり、波が少しでも出ていればいいが、ベタナギの場合は自分の体を左右に揺らして仕掛けを上下させると、誘いになる。

◆エサ 紅サシと塩漬けイクラの併用。どちらがよく食うか判断して、つけ替える。入れ食いになれば、カラバリでもいい。

◆トローリング サオの角度を45度ではなく、20~30度と低くして、少し速めに引くと反応良く食ってくる。

◆サオ アタリの取りやすい先調子のサオはバレやすい。むしろ、マダイやヒラメを狙う軟調胴調子で、オモリ負荷30号のサオの方が針掛かりしやすく、分がある。

<ヒメマス>

サケ科ベニザケの陸封型で、湖や沼に生息する。原分布は北海道や、カムチャツカ半島、北米太平洋岸など。日本の原産地は、北海道にある阿寒湖と、網走川上流のチミケップ湖。20世紀初頭、ここから卵が青森・十和田湖など、全国の湖に移植された。冷水を好み、群れで遊泳する。3~4年で成魚となり、30センチほどになる。

◆白根【電話】090・4917・4480。30日まで出舟午前5時30分、岸着午後3時。10月から出舟午前6時、岸着午後5時。ヒメマスは制限匹数30匹。コマセ禁止、サオは1人6本まで。仕掛け1枚400円。手こぎボート1日1人3000円(2人乗り同4000円)。日釣り券は男性1500円、女性と中学生750円、小学生以下無料。http://www.himetoro.com/