「アニキ」こと俳優哀川翔(60)が、好調の続く千葉・内房は保田「村井丸」(村井智博船長=58)でLT(ライトタックル)クロダイ五目に初釣戦した。開始直後からあちこちで本命をはじめ、50センチを超える特大金アジも上がるなど、船中がにぎわった。一方のアニキはオジサンが1匹だけと、まさに「蚊帳の外」。初の完封負けも覚悟していたら、素晴らしく劇的な幕切れが待っていた。

「キタ!」。アニキが周りに響き渡るような大声で叫んだ。目の前で愛用のサオがドーンと、海面に突き刺さっている。沖上がり10分前、突然クライマックスは訪れた。

電動リールのはずが、慌ててスイッチを入れ忘れた。手巻きでやりとりする。この慎重さが「吉」と出た。海中から上がってきたのは48センチ、2キロとこの日最大のクロダイだった。

「ヤッター!」。村井丸のスタッフ、海老沢利明さん(54)の入れたタモに取り込まれると、針を外すのも忘れてガッツポーズまで飛び出した。終了5分前、一発大逆転のサヨナラホームランが飛び出した。

午前6時すぎの開始早々から船内では、40センチ前後の本命クロダイをはじめ、50センチはあろうかという大アジ、3キロのカンダイ、40センチ級のメジナと、豊かな海を象徴するかのような多彩な魚が掛かった。アニキは9時半ごろにオジサンを釣っただけ。「還暦のオジサンがオジサンかよ」。思わずボヤキが出た。

確かに潮の流れは緩慢だった。コマセは前後左右に流れず、真下にゆっくりと落ちるだけ。食いも渋い。村井船長が、「延長しますか」と尋ねたほどだ。

「初めて、ボウズか?」。覚悟していると、海老沢さんが「コマセワークと誘い」を伝授してくれた。

オモリ40号内蔵のビシが着底したら、糸フケは取らずにそのままの状態で船べりから頭のてっぺんまでサオを大きく振り上げ、コマセを一気にまく。そのまま3メートル巻き上げる。ハリスの長さは6メートル。上半分だけ巻き、下半分は底付近をはうようにして誘う。

同じLTでも、イワシミンチを使うアジだと糸フケを取り、道糸を張ってからコマセを振り出す。「実はそれだと、底付近を泳ぐクロダイより微妙に上の層でコマセが出てしまう。高さにしてわずか5センチ、10センチの差だけど、本命の遊泳層にコマセが届かないので、いつまでたっても食いません」(村井船長)。あくまで底でドバッとまいて、群れを絶えず寄せておくのがコツだ。

さらに食いが渋い時の対策として、付けエサのオキアミは小さくても身のしっかりしたものを2匹抱き合わせにした。1匹掛けにするよりもアピール度が高い。いい具合に潮が少し流れ始めた。あとは食うのを待つだけだった。

釣り方の技術を体得すると、海の恵みとも言うべき貴重な1匹を手にできた。ちょうど1年前、熱海「喜久丸」で終了間際に41センチ、1・5キロのイシダイを釣り上げている。2年連続でメークドラマを演じた。

本業では、今秋開始予定の次期NHK連続テレビ小説「舞い上がれ!」への初出演も発表された。海好き、釣り好きを反映してか、船大工の役だ。これからは収録もあって、忙しくなりそうだ。多忙な日程を縫っての「翔劇場」の最後は、決めゼリフで締めてくれた。「満足よ」。【赤塚辰浩】

■GWから50センチ超え大物も

内房のLTクロダイ五目の沖釣りは4年ぶりの厳しい寒さのため、2~3月のスタート時こそ潮温が上がらず、活性も低かった。日によって、夏日を記録した4月下旬あたりまでは40センチ以上の一発良型狙いだった。5月の連休期間あたりからは活性が高くなり、「50センチ超えの大型が出ているほか、数も伸びるなど、例年並みになってきた」(村井船長)。

現在は潮温も18度前後と、適温になっている。ノッコミもしており、これからが最盛期。産卵後に体力を回復するためにみせる「荒食い」も含め、6月末から7月上旬までは楽しめそう。村井丸では当分、クロダイと大アジの併用で狙っていくという。

▼船 保田「村井丸」【電話】0470・55・1121。船宿集合は午前4時30分。車の場合、店舗で駐車証を受け取り、少し離れた船着き場へ。その手前に止まっている船宿の軽トラックの荷台から氷を自分のクーラーに入れ、乗船。そろい次第、出船。LTクロダイ五目、LTアジはともにコマセ・氷付き9000円。

■アドバイスと注意

◆誘いの指示 ポイントにより誘い方はいろいろ。船長がその都度、アナウンスしてくれる。使うハリスの長さ6メートルに対し、「下から3メートル巻く」が基本。同5メートルの場合もある。ほかに、コマセを底でまいたら6メートル巻き上げ、30秒ほど待ち、3メートル下ろして付けエサをゆっくり落とし込む「6の3」もある。同じタイでも、マダイはドバまきせず、指示ダナでピタッと止めてコマセカゴからコマセのオキアミが1匹、また1匹とポロポロ出せばいい。寄せと誘いは、魚種によって違う。

◆コマセカゴ サニーカゴFLサイズまで。上の窓は閉め、下は2~3ミリ開けてコマセが一気に出せるようにしておく。

◆アワセ 食いが立てばサオ先がドーンと海面に入る。食いが渋いと、居食い(その場で動かずにエサを食べていること)している場合がある。プルプルとサオ先が揺れる「前アタリ」の後、少しでもグンと引き込まれたらチャンス。クロダイは鋭く硬い歯の周りに柔らかい場所がある。大げさなくらいに大きなアワセをすれば、針先が刺さる。

◆長袖と日焼け対策 本格的な夏が訪れるまで、朝は「梅雨寒」の時がある。日焼け対策も含めて、吸水性と速乾性に優れた長袖シャツがあれば便利。ほかに帽子、サングラス、日焼け止めやタオルは必需品。