かかり釣りの祭典「K-ZERO15周年記念フェスティバル2022in三重・九州」(主催・K-ZERO、協賛・(株)オーナーばり、マルキユー(株)、黒鯛工房、エサ市場・えさきちほか)が10月30日、三重県の鳥羽・小浜、同・浜辺屋の筏、佐賀県肥前町にある仮屋湾のかかり釣り場の3カ所に分かれ、インターネットを利用した同時開催が行われた。一般参加も含め、185人が参加し、チヌの総重量を競った。個人戦は2匹(2・45キロ)を釣った九州支部の国武恵さん(熊本・山都町)が優勝した。チーム戦のフレンドカップは「京阪チヌ研チームK」が合計2・53キロで制した。【近江康輔】
「驚きました。なんともいえない気持ちでした。まぐれですが、うれしかった」。国武さんが控えめに言葉を選びながらも、優勝の喜びを口にした。当日の仮屋湾のかかり釣り場は、潮の動きが鈍く、風が強くて非常に釣りづらい悪条件だった。そんな中、最初は得意のゼロダンゴ釣法で探るが、向かい風でラインコントロールができずに断念。
それならとオキアミをつぶしたものや「ニュー活さなぎミンチ激荒」など、集魚効果の高い餌をまぜにしたダンゴを足下に打ち続けて濁りをキープ。サナギを餌に5グラムのタングステンオモリを付けた仕掛けでダンゴの濁り周りに落とし込み2匹のチヌ(2・45キロ)を仕留めた。
勝因は「餌とりがいなかったので、ダンゴの濁りを切らさずに攻め続けたことです。潮が動いた一時にチヌの食いを引き出しました」と振り返る。国武さんは、かかり釣り歴15年で、10年前に「K・ZERO」に入会。20年の大会では、九州会場で5位に入る腕達者。「K・ZEROは、上下関係がなく、和気あいあいとした雰囲気でチヌのかかり釣りを楽しめるところがとてもいいです。各地の上手な方と知り合うことができるし、釣り方を勉強できるのもいいですね」と話す。
かかり釣りの魅力を聞くと「短竿で繊細なアタリを見極め、ダイレクトなやりとりが楽しめること。年なしを浮かせたときには、最高に気持ちいい。こんなに面白い釣りはほかにはないです」と声を弾ませる。
数釣りよりも、大物狙いが信条だそうで、これまでの自己記録は50センチ弱。「ゼロダンゴのはわせ釣りに磨きをかけ、サイズアップを狙っていきたい。次は55センチを仕留めてみたいですね」とまだ見ぬ大チヌにも夢を膨らませた。
◆2位・中村八大さん(九州支部) 普段から通っている釣り場だったので釣り方はわかっていた。前方に潮が流れるとシラサエビをたっぷり入れたダンゴを落とし、ダンゴが割れたあと刺し餌を同調させて1匹、2匹目は筏際にダンゴを落として底から2メートル上で割り、ボケの落とし込みで仕留めた。優勝できなかったのは実力不足。もっと修業しないとだめですね。
◆3位・古庄公司さん(九州支部) 水深が浅くて筏の下は魚っ気がまったくなくて苦労しました。納竿間際の午後1時半ごろ、青イソメを1匹掛けにタングステンオモリの7グラムを使った遠投で44・2センチを仕留めた。8人で筏に乗ったが、マチヌはこの1匹だけ。厳しい釣りだったので、なんとか良型を引き出すことができてうれしいです。
◆レディース優勝・永田朱美さん(一般) 5グラムのタングステンオモリを使って前方の筏際へ遠投して釣りました。グッチの高級バッグ(副賞)がもらえて、めっちゃうれしいです。
【上位成績】◆総合順位(1)国武 恵(九州支部)2・45キロ(2)中村八大(同)1・65キロ(3)古庄公司(同)1・35キロ(4)松本隆司(京滋支部)1・30キロ(5)藤尾正由(阪神支部)1・16キロ(6)小倉秀樹(一般)1・12キロ(7)青山慎司(尾張支部)1・09キロ(8)臼井光晴(同)0・99キロ(9)上田耕太郎(京滋支部)0・97キロ(10)鈴木孝治(尾張支部)0・86キロ。◆レディース部門(長寸で決定)(1)永田朱美(一般)24センチ(2)仲村亜矢子(同)16センチ(3)味岡麻妃呂(京滋支部)15センチ=敬称略。
<Fカップは京阪チヌ研チームKが優勝>
フレンドカップ(チーム戦)はトーナメンターの精鋭がそろう「京阪チヌ研チームK」が制した。水温が高くて餌とりが多い中、全員が各所できっちりとチヌを食わせ、5人のトータル力で2・53キロを釣り上げ、勝利を引き寄せた。リーダー格の那珂浩一さんはタングステン7グラムの投げ込みと、ダンゴ周りの落とし込みで2匹仕留めた。最多匹数の近藤雅一さんも、短い時合を逃さずにエビダンゴで4匹ゲット。ほかの3人も、ダンゴのはわせ釣りなどでアジやフグをかわし、チヌに口を使わせた。副賞(大型釣り具、釣り餌専門店「エサ市場・えさきち」の賞品券20万円分)は山分け。「これから参戦する全日本かかりチヌトーナメントの餌代に使います」とにっこり。腕達者の5人がさらなる高みを目指す。
<大会経過>
3エリアともに午前6時半ごろ~午後2時までチヌの総重量を競った。小浜は水温が高いせいか、カイズ(小チヌ)の回遊が遅れ気味。仮屋湾でも風が強いために苦戦を強いられ、各エリアともに匹数は伸びなかったが、サイズで三重を上回った九州が上位を独占した。開会式、表彰式はインターネットの同時中継で行われ、盛り上がりをみせた。また、大会本部には焼きそば、から揚げ、今川焼きなどの屋台が出て15周年を祝うお祭りムードを満喫した。
<吉岡さん100万円に大興奮>
15周年記念の目玉は兼松会長が引き当てたサイズのチヌを仕留めた人に100万円が当たる「アニバーサリー賞」。大会開始後、午前9時ごろに会長が25~39センチのカードの中から1枚(34センチ)を選び参加者へ一斉にライブ配信。そして、表彰時に会長がさらにミリ単位のカード(7)を引き、サイズ(34・7センチ)を決定した。
この瞬間、鳥羽会場の該当者4人(34・2センチ2人、34・5センチ、34・9センチ)は肩を落とし、九州会場(該当者1人)が興奮のるつぼに。最も34・7センチに近い34・8センチを釣った吉岡正樹さんが飛び上がって大喜び。ガッツポーズを繰り出し「信じられない。こんなことめったいにないのでびっくりです」とコメント。優勝者の副賞ではなく、子供から年配者、ベテランまで参加者全員に最後までチャンスがある「K・ZERO」ならではの獲得ルールに大盛り上がりだった。
◆兼松会長の談話 ほんとに和気あいあいと楽しい大会になったんじゃないかなと感じております。みなさんのかかり釣りに対する情熱と、日頃から磨いておられる釣技によって、予想以上にいい釣果が出たことをうれしく思います。10周年記念のときは鳥羽で、今回は九州が上位を独占しました。次の大会も全国の仲間と釣技を競って頑張ってください。来賓の方々もたくさんきていただき、盛り上げていただいたことに感謝しております。これからも、チヌのかかり釣りを活性化していくために尽力してまいります。
◆K-ZERO かかり釣りの名手・兼松伸行氏(日刊FPC)が会長を務める釣りクラブ。ビギナーからトーナメンターまで門戸を開き、釣りクラブや団体などの枠を超えて垣根なしに集まり、かかり釣りの技術発展、親睦を目的に活動している。関東から九州まで10支部がある。各支部の懇親大会のほか、年に3回の黒鯛工房杯が行われており、毎年、秋に総括大会の「K-ZEROフェスティバル」を開催している。