“友釣り発祥の川”として全国的に高名な静岡・狩野川が21日、アユ釣りの解禁を迎えた。5月下旬の解禁は3年ぶり。

オトリアユを販売する旭水園「菊地文子女将(おかみ)」には解禁を待ちわびるファンが前日から集結。菊地さんによれば、「前日の午後には駐車場の半分が埋まっていました」という。前日は興津川の解禁日だったが、厳しい状況だった。中には「興津川を見てこれは厳しいと思ったのでサオを出さず、その足でここに来た」という方も多かった。

21日の夜明けとともに解禁だが、午前3時半過ぎには続々と入川。その先陣を切ったのが旭友会の花井城助会長(78)だ。「いい場所を取らないとね」と笑いながら、狙いを付けていた松ケ瀬つり橋下流のアシ際を目指した。「あそこは魚の通り道で、流れがトロむので解禁時は狙い目」とほほ笑んだ。正午すぎに上がった花井会長は26匹を釣り上げた。「大きいのもいるけど、8割は小さい天然モノ。これだけ天然そ上が多ければ、今後が楽しみ」と話した。

つり橋上流では、高岡正和さん(53)が午前4時半からの約5時間で32匹を掛けた。福井・九頭竜川がホームでアユ釣り歴30年だが「友人に誘われて、狩野川は初挑戦。小さいのは天然っぽいけど、大きいのも時々かかって面白かったです」。また、つり橋下流では白幡光明さん(51)が約5時間半で59匹とアマゴ1匹をゲット。「狩野川の解禁は初めて。今年は年券を買って挑んだけど、ここまで釣れるとは思わなかった」と笑いながら、「場所が良かっただけです」と謙遜した。

その一方で、「釣れているのはつり橋の上下付近と上流の一部。場所限定っぽい。でも昨日の興津川よりはいい。興津川でもサオを出したけど、ゼロでしたから…」と笑う人もいれば、「5時間やってゼロだよ。俺がヘタなんだろうけど。釣れないと疲れる。温泉に入って帰ります」と肩を落とす人もいた。

旭水園前は、昨年あった分流が上流の工事によってほぼ渇水、本流のみが釣り可能状態となった。「元々分流は台風の影響でできたので、元に戻っただけです」と菊地さん。この日、旭水園では午前5時には入川者が120人を超え、150匹用意したオトリが残りわずかとなり、追加の70匹を発注。年券も足りなくなり、「まだ漁協は空かないし、どうしましょう」とうれしい悲鳴を上げた。

狩野川は5月初旬に10~15グラムの稚魚を約1トン、次週には約20グラムの成魚を約0・5トンの計約1・5トンを放流。17日には6カ所で1時間の試し釣りを行い、最多は嵯峨橋付近の16匹(オトリ込み)、最大は大見川小川橋付近の22センチだった。