本紙野球評論家で“大魔神”こと佐々木主浩氏(55)が、静岡・御前崎「博栄丸」(大沢洋輔船長=46)で金洲五目に挑戦した。金洲とは、御前崎沖の南約25キロ付近に位置する太平洋岸有数の好漁場。深場や浅瀬、カケアガリ等が約6~7キロ四方にあり、各根によって居付く魚も変わる。大魔神の狙いはモロコ(クエ)だ。20年12月、九州で35キロを釣り上げているが、果たして大物の顔をみることはできるのか?

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「大物ハンター」大魔神の狙いは、ムロアジを餌にした泳がせ釣りで狙うモロコだ。「今日はモロコ狙いでいく。他の魚はいらない!」と宣言。大沢船長に確認すると、「1年で3~5匹、顔をみられればいいところ」という。好漁場の金洲であっても珍しく、難しい獲物をターゲットとした。

午前4時過ぎに御前崎港を出港し、走ること約1時間半。遠くに富士山は見えるが、四方は海。まずは餌となるムロアジの確保でサオを出す。大沢船長の指示ダナにビシを落としてしゃくると、すぐにサオ先がグンと曲がった。「当たった。でもサバっぽい」。巻き上げる最中にもサオ先が暴れる。「餌にいいんじゃないか!」。だが上がったのはデカイサキ。「でかっ! これじゃ、餌にならないよ」と思わず苦笑。だがその後、ムロアジを釣り上げると「特餌確保!」。さらに数匹ゲット。これで準備は整った。

モロコ狙いのサオに大魔神お手製仕掛けをセットするが、これがとにかくごつい。「ハリス80号で針は30号だったかな? オモリは200号」。これに30センチはあるムロアジの下アゴから針を刺すと「行ってらっしゃい!」と海面に投入。「モロコは根に潜んでいる。カンパチに食われなければいいんだけどね」。

泳がせ釣りはロマンあふれる釣りだが、ひたすら待つ釣りでもある。2時間ほど大きなアタリもなく、ただ時だけが過ぎていく。ムロアジが尽き、イサキを餌に落とし直した午前10時ころ、それは突然やってきた。あり得ないくらいにサオがしなる。折れんばかりの勢いだ。ロッドキーパーからサオを外し、手にすると「楽しい!」と笑みを浮かべた。サオ尻を腹に当て、両手でしっかりサオをつかむ。「く~、楽しいよ!!」の言葉とは裏腹に、大魔神の腕がプルプルと震える。魚の激しい抵抗でサオ尻が腹から外れるも、腕力で持ちこたえる。サオは再びあり得ない角度に曲がり、船べりに当たった。

やがて、海面に大きな魚影が浮かび上がる。「やっぱり、サメか!」。ここでハリス切れも、「楽しい~!」とはしゃいだ。「サメにも負けない俺のパワー。すごくない?」と大物ハンターならではの感想を口にし、「35キロ釣ったときのほうがすごかったな。あのときは根掛かりかと思ったくらいだったから」と感慨深げに話した。

結局この日、モロコの姿を見ることはできなかったが、「なかなか釣れないからロマンがある」と大魔神。加奈子夫人とともにファンという本紙釣り面でボウズを連発した演歌歌手の出光仁美を引き合いに出し、「出光さんがマダイを釣れないのとは訳が違うから」といたずらっぽく話した。

大沢船長によれば「この時季はシマアジ、ムロアジ、イサキ、ウメイロやオナガダイなどが楽しめます。特にムロアジ、イサキは脂が乗っているので、釣れたらぜひ、刺し身で味わって欲しいです」という。今後は、「黒潮が落ち着いていれば五目でムロアジやイサキ、それを餌にした泳がせでモロコ、カンパチが狙えます。潮が速ければカツオですね。群れは確認できていますが、まだオキアミに食ってこない。いずれにせよ、黒潮の状況次第です」とアピールした。

魚種が豊富で大型魚もひしめく金洲。未体験者はぜひ1度挑戦を!【川田和博】

■全部がデカい、規格外の大きさ/記者釣行

大魔神の餌を確保する。そんな名目で金洲初体験となったが、結論から言えば、任務は遂行できなかった。なぜなら、釣れる魚が大きすぎたのだ。「わざと大きいの釣ってるじゃないの?」と突っ込まれるほどだった。イサキ、ムロアジ、ウメイロ、サバ等が上がったが、東京湾がメインの記者にとっては、すべてが規格外の大きさ。また、カツオ狙いでタナを上げた際には、キメジがヒット。2キロほどだったが、人生初キメジもゲットした。豊富な魚種に大型魚も交じるが、サオはマダイもしくはワラサ用で十分挑める気軽さも、魅力の1つかもしれない。大魔神とは違う意味の「楽しい」を味わうことができた。

▼御前崎「博栄丸」【電話】0548・63・3337。午前4時までに集合、餌別、氷付き1万4000円。※出船可否は必ず船宿に電話確認を。