日刊釣りペン・クラブの大関実氏(55)が、千葉・三島湖「ともゑ」(森和人店主=56)で夏のヘラブナ釣りに挑戦し、その傾向と対策について話した。三島湖では7月末からヘラブナが好調。連日40センチ級が上がり、数もトップで20~30匹が続いていた。だが取材当日、大関氏は渋い表情。それは三島湖特有の影響により、厳しい釣行になることを想定していたからだ。その要因とは…?
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海から湖川までさまざまな釣りに精通する大関氏だが、この日は釣行前の表情が渋い。その理由は森店主の言葉にあった。「三島湖は湖の実力以外の影響で、状況が大きく変わってしまいます」。大関氏によれば、「上流の豊英湖が放水すると、三島湖のヘラブナは釣れなくなってしまうんです。これは昔から変わりません」。そしてこの日、放水が行われた。
ヘラブナ釣りには「春は底、夏は風、秋はタナを釣れ。冬はコタツで丸くなれ」という格言がある。大関氏は、「夏ベラは水通しのいい深場、つまり水が滞留せず、常に流れがあるところに魚が集まるポイントが狙い目ということです。水通しのよい場所は酸素量が豊富ですから」と解説してくれた。三島湖で当てはまるポイントとして選んだのは「トリ小屋下」だった。
「ヘラブナ釣りはまず餌を打って魚を寄せ、アタリが出始めないことには始まらない釣り」と大関氏。まずは19尺天々両ダンゴ(ハリスの長さ65&80センチ)、餌は硬めのボソボソ系で様子見。約15分後、ウキにアタックする魚が集まってきた。その5分後、ビシッと合わせるとサオが大きくしなった。「食っていない。スレです」。実際、尾に掛かっていた。慎重なやりとりで上がったのは40センチ級だったが、「競技なら貴重な1匹だけど、今日は取材なのでこれはいいです」とリリース。
より深場を探るべくサオを20尺に変更すると、オダに根掛かりしてしまった。「ここにオダがあるとは知らなかった。でも、オダがあるところには魚が集まりますからね。海でいう魚礁と同じです」。しかし、根掛かりしてしまっては釣りにならないため、5メートルほど下流に移動。つまり、イチからやり直しを余儀なくされた。
厳しい釣行を予想していた大関氏だが、実際その通りとなった。サオを21尺に替え、ウキもパイプトップからグラスムクに変更。餌の硬さも変えるなど、持てるワザを駆使してアタリを出す。「アタリがあってアワセて終われれば、サッカーで言えばシュートで終わるのと同じです」。ポイント変更から約45分で37センチをゲットするが、「この時季にトリ小屋下で釣れるサイズではないね」とポツリ。「魚は集まっているが、大きいヤツのスイッチの切れている。中途半端なことも試してみましょう」と16尺に変更。両ダンゴで食わないとみるや、食わせを意識したヒゲトロセットも試した。これで2匹を掛けるが「どれも判で押したような型ですね。奥の手です」と力玉セットを投入。これで2匹をゲットだが、いずれも30センチ台後半。「まるで厳寒期の管理釣り場のように、無理やり当たらせるような釣りになっていますね」と苦笑。「本来の釣りに戻してみましょう」と21尺天々両ダンゴに戻して2匹を追加するも型は変わらなかった。ここで正午を過ぎ、終了となった。
大関氏は「豊英湖からの水は冷たくて、三島湖のヘラは水温が下がるとスイッチが切れてしまいます。最後の方は温まってきたのか少しは口を使うようにはなったけど、本来の三島湖の夏ベラではない。もっといいはず」とし、「夏ベラは格言通り、水通しのいい場所を狙うのがいいと思います。その上で、ヘラブナ釣りは1日を通しての釣りなので、その日の正解を早く見つけられれば数を伸ばせます。そのためにも、いろいろと試してみてください」とアドバイスをくれた。なお釣果は、約6時間で最大37センチ計8匹だった。
大型が期待できるだけに、釣り自体の難しさも増す。さらに、外的要因も加わるとなれば、三島湖を攻略するには技術に加え“情報”も大きな要因となりそうだ。【川田和博】
■大関氏のワザ
取材当日、記者が確認した大関氏のアタリを出すためのテクニックは以下の通り。
<1>サオ
ポイント変更後、20→21→16→21尺と変更。「やってダメならやめればいい。最初から試さないのはよくない」。
<2>ウキ
パイプトップ→グラスムクに変更。「パイプトップは1度沈んでから浮き上がる力が強い。グラスムクは一方通行なので、より自然に餌が落下し、魚へのアピールにつながる」。
<3>餌
マルキユー「カクシン」「コウテン」両400グラム&「凄麸」200グラムに水200グラムで様子見後、水を400グラムに変え柔らかめに。その後、食わせで「ヒゲトロ」「力玉」を使用。
<4>ハリスの長さ
両ダンゴは65&80センチ。食わせに変更後は20&25センチ。「いつもの長さ」だが、アタリを出すために20&28センチ、15&30センチ、15&45センチも試す。
■森店主アドバイス
森店主によれば、「年間でみてもいい型が出るし、数も見込める時季ですが、それだけに難しさもあります。例えば餌。餌の方向性が違うと、同じサオの長さ、タナで釣っていても釣果に差が出てしまいます」。また、「決めつけはダメ」とキッパリ。「“この時季はこう”というセオリーを優先し、試さないのはやめた方がいい。真夏にグルテンで釣る人はいないと思いますが、試しにやってみたら良かったなんてこともあります。一筋縄ではいかないけど、その分楽しさもあります!」とアピールした。
▼三島湖「ともゑ」【電話】0439・38・2544。出舟時間は手こぎ艇午前5時、エレキ艇5時10分、引き船5時30分。帰着午後4時30分。レンタルボート1日3000円(2人乗り1000円増)、エレキやバッテリーのレンタル(有料)もあり。※詳細は必ず電話にて確認を。