医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

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 ぼくは内科医。42年前、東京の大学を卒業後、地域医療をやるため長野県にやってきた。

 当時の長野県は、脳卒中による死亡率が全国で2番目に高く、平均寿命は短かった。不健康で高い医療費。そこで年80回、地域に出て健康教育を行った。

 まず取り組んだのは、減塩運動だった。現在、厚生労働省は1日の塩分摂取量を男性8グラム未満、女性7グラム未満を目標値にしているが、当時、長野県では1日約18グラムとる人が珍しくなかった。

 塩分を控えたみそ汁を作ると、「こんなみそ汁食えるか」と亭主が不機嫌になる。家庭円満か、健康か。せっかく減塩の勉強をしても、女性陣たちの動きはそこで止まってしまった。

 そこで、ある女性が考案したのが、具だくさんみそ汁だ。野菜やシイタケ、コンニャクなどの具を増やすことで、汁の量が減った。野菜から出る旨みも増したため、みその量を減らしても「薄味」と気づかれにくい。具を増やしたら、約2グラムの塩分のみそ汁が、約0・7グラムに減った。代打逆転満塁ホームランである。

 みそ汁の減塩の成功は、ほかのものへのとっかかりになった。信州では野沢菜の漬物をよく食べる。塩辛い漬物に、しょうゆをドバドバかけるのである。このしょうゆドバドバ習慣が次第になくなっていった。着実に効果は現れた。今や長野県は、男女ともに平均寿命日本一である。

 欧米では、1日の塩分摂取量の目標を6グラムとしているが、日本でそこまで減塩するのは難しい。まずは10グラム以下を目指すことから始めてみよう。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。