元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。

 Q 朝、起きると、顎が疲れているのですが、歯ぎしりでしょうか。

 A 睡眠中の歯ぎしりは、上下の歯をギリギリとすり合わせるグラインディングと、グッと強くかみしめ続けるクレンチング、数は少ないですがカチカチと音を鳴らすタッピングの3つに大別されます。グラインディング、タッピングは周囲が気付きやすく、音が出ないクレンチングは重症化しないと分かりません。

 過度な力がかかると、歯がすり減り、かみ合わせに影響が出てきます。歯周病は本来、口の中の汚れから引き起こされる病気ですが、歯ぎしりがひどい人の場合は、歯を支える骨がその強い力を受け止めきれず、歯周病を進行させることもあります。

 歯がすり減ったら知覚過敏を起こしますし、かぶせ物や詰め物に穴が開く、欠ける、ひび割れる、歯根が折れることもあります。顎関節に違和感が生じ、強い痛みを伴う人もいて、その結果、口が開けづらかったり、全く開かなくなってしまうこともあります。頭痛がひどい、肩凝りがひどい…などの症状もあります。かむ時は体重と同じくらいの力がかかるとされ、体が大きい人ほどひどくなりがちです。

 歯ぎしりは、精神的なストレスから生じることが多いといわれますが、何が原因か実は分かっていません。遺伝や飲酒、薬の服用なども原因として挙げられるようです。私自身、大学生の時に顎が開かなくなったことがあります。大学病院で診てもらってマウスピースを入れ治療しました。スプリント療法と言って、寝ているときにマウスピースを装着して歯に加わる衝撃を減らす方法です。マウスピースを装着することで安心感が得られ、精神的にもリラックスする効果もあるようです。この方法で大半の人は症状が緩和するのですが、マウスピースが気になって眠れない人もいます。

 形、素材はバリエーションがあり、その人のかみ合わせに合ったマウスピースを作ることは保険治療でも対応が可能です。自己負担は5000円くらいです。

 歯科医が口の中を見れば、その人が歯ぎしりをしているかどうかはある程度分かります。ひとり暮らしで周囲から指摘されることがない人は、一度診てもらうと良いでしょう。

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」(アスコム)。