現在、その流行が懸念されている「梅毒」をはじめ性感染症にかかると、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)にもかかりやすいといわれている。HIV感染は、エイズ発症の原因である(HIV、エイズについては後日解説する)。エイズの早期発見には梅毒、性器ヘルペス感染症、淋菌(りんきん)感染症(淋病)、性器クラミジア感染症に注意しなければならない。

 性感染症に詳しい「しらかば診療所」(東京都)の井戸田一朗院長はこう話す。

 「たとえば梅毒、性器クラミジア感染症、淋菌感染症にかかるとHIVに3~5倍かかりやすいといわれています。どうしてそうなるのか。こうした疾患は、皮膚粘膜にさまざまなびらんや潰瘍といった病変を起こします。そうした場所はいわば傷口なので、HIVが入り込みやすいのです」

 反対に、すでに感染している人からのリスクもある。井戸田院長が続ける。「HIVに感染してウイルスを持っている人が他の性感染症に感染していた場合、適切な治療を受けていなければ、ウミなどの分泌物に白血球やリンパ球が含まれており、その中にHIVも含まれていることになります」。

 パートナーに感染させる危険が高まるのは当然。「その意味でも、梅毒などとHIVは密接な関係があるといわれているのです。また、9割以上は症状がない性器クラミジア感染症の場合、とくに女性で、本人が気づいたときにはすでに腹痛や不妊など重大な結果になっていることがあります。そうならないために検査は重要です」(井戸田院長)。

 梅毒や性器クラミジアは症状に乏しい。検査で早期発見できれば、治療につながり、感染拡大を抑えられる。