A型肝炎はA型肝炎ウイルスによる急性肝炎。多くは自然に治癒するが、まれに劇症化し命を落とすこともある。ちょっとマニアックなプレーに関心のあるヒロさん(26)が、劇症肝炎を患い死の淵をさまよったのは、偶然ではなかった。

 「まさか自分がこんなことになるなんて思ってみませんでした。悔いばかりが残っています」。ヒロさんはセックスの際、必ずといっていいほど女性の肛門(アナル)への挿入を好んでいた。コンドームをつけずに射精しても妊娠する危険はなく、独特の快感がクセになっていたという。それまで性感染症に感染したことはなく、それが油断のもとともなった。

 A型肝炎ウイルスは糞便(ふんべん)から口への感染が主。その感染力は強く、家庭のような密接な関係で広がることは知られているが、最近、ヒロさんのようにアナルプレーを好む人の感染例がみられる。消化器病に詳しい医師は、理論上A型肝炎ウイルスがアナルをなめたり、いわゆるSM愛好者の間で感染したりすることは十分考えられる。注意喚起が必要だろうと指摘している。ヒロさんは適切な治療を受けて、命を取り留めることができた。

 A型肝炎ウイルス感染の多くはカキやアサリなどの食べ物を介して起きるが、まれにこうした例があるということだ。この病気の潜伏期間は平均28日間で、症状は黄疸(おうだん)、発熱、倦怠(けんたい)感、食欲不振、嘔吐(おうと)、肝腫大(肝臓が大きくなる)などを伴う。

 予防にはA型肝炎ワクチンが効果的でHIV(エイズウイルス)感染者にはその接種が推奨されている。とくに男性同士の性行為による報告が多く、今後の広がりが懸念されている。