何だかイライラする。それどころか感情を抑え切れず、「違うだろー!」と爆発してしまった-不寛容が広がっているためでしょうか、攻撃的な人、感情を抑制できない人が増えているような気がします。カチンときた、ムッとした、湧き上がる「怒り」にどう対処していけばいいのでしょうか。今日から安藤俊介日本アンガーマネジメント協会代表理事が「怒りの処方箋-アンガーマネジメント入門-」を連載します。

 アンガーマネジメントとは、怒り(Anger=アンガー)の感情と上手に付き合う(マネジメントする)ための心理トレーニングです。1970年代に米国で始まりました。

 当時、米国はスティーブン・スピルバーグ監督のテレビ映画「激突!」(1971年)で描かれたような「ロード・レイジ」(Road Rage=レイジは抑えがたい怒り)が社会問題になっていました。割り込みや追い越しに腹を立て、過激な報復行動を取ることがロード・レイジです。日本でも運転中、ちょっとしたことでキレてしまう人がいますが、銃社会の米国では射殺事件も発生しました。

 アンガーマネジメントは矯正プログラムとしてセラピスト、カウンセラーの間で生まれ、DV(ドメスティック・バイオレンス=家庭内暴力)の加害者、レイシスト(差別主義者)など、さまざまなシチュエーションに使われるようになりました。一気に普及したのは2001年の米中枢同時テロ事件です。

 不安と怒りはリンクしています。不安が大きいほど怒りも大きくなります。衝撃的な事件で社会不安が増大し、それまでのカウンセリングでは足りないという人たちがアンガーマネジメントに向かいました。今、アンガーマネジメントは企業研修、学校教育、アスリートのメンタルトレーニング、司法などさまざまな分野で使われています。

 司法は全州でプログラムが導入され、アンガーマネジメント受講が裁判所命令として出されます。交通違反でも命令が出ることがあります。車の運転が荒い人は、怒りの問題があると考えられているのです。

 ◆安藤俊介(あんどう・しゅんすけ)1971年(昭46)、群馬県生まれ。東海大教養学部卒。ニューヨーク在勤中にアンガーマネジメントに出合い、2011年、日本アンガーマネジメント協会設立。近著に「○×まんがでスッキリわかる もう怒らない本」など、著書多数。