大半の人は、怒りの感情をうまくコントロールできずに苦労しています。

 苦手な理由は、ひとつは教育として教わったことがないことです。「人前で怒ってはいけない」と、小さなころにしつけられますが、なぜ怒ってはいけないのか、どう対処したらいいのか、教えられることはありません。理由も具体的な方法論も分からないまま大人になり、多くの人にとって怒りは理解しているとまではいえないものです。

 もうひとつの理由は目に見えないことです。目に見えるものはまだコントロールすることができますが、見えないものはコントロールしにくいのです。アスリートのメンタルトレーニングとしてのアンガーマネジメントを取り上げた回で、不安や現在の状態を言葉にしてみるという話をしました。アンガーマネジメントは言葉や数値を使って怒りを目に見える形にしてコントロールするトレーニングをします。

 数値は温度計をイメージして、ゼロを穏やかな状態、10を人生で最も怒りが強い状態として、怒りのたびに点数をつけます。そうすると、今、3ぐらい怒っているとか、これは6ぐらいとか分かるようになります。体温でも血圧でも数値が分かれば、対応できます。目に見えない怒りを数値化して対応できるようにする方法です。

 点数のつけ方はそれぞれで、絶対値はありません。他の人からは「何それぐらい」ということでも本人にとってはすごく強いものかもしれません。夫婦げんかなどでよくあることですが、「そんな小さなことでいつまで怒っているんだ」ということが大きな怒りだったりします。繰り返し点数化することで分かってきます。