朝起きたらスマホを触り、通学、通勤の間もスマホ、仕事の合間もスマホをチェックし、帰ってきてもスマホざんまい。夜寝るまでずっとスマホを握っている…。こんな生活をしている人、けっこういるのではないだろうか。

 「ネット依存症から子どもを救う本」(法研)の著者で、ネット依存症治療の第一人者である「国立病院機構久里浜医療センター」(神奈川県)の樋口進院長に話を聞いた。樋口院長は世界保健機関(WHO)専門家諮問委員、インターネット使用障害に関するWHO専門家東京会議(14年)、ソウル会議(15年)、香港会議(16年)議長、厚生労働省厚生科学審議会委員などのほか、WHOアルコール関連問題研究・研修協力センター長を務めている。

 同院では樋口院長を中心に、11年7月に日本初の「ネット依存治療専門外来」を開設。日本のネット依存症治療のけん引役を担っている。「インターネット依存症」という言葉が出てきたのは90年代半ば。当時はまだごく一部の病と思われたが、いまや誰もが陥りうる身近な脅威になってきた。樋口院長は、ネット依存が近年より深刻化していることを強調した。

 質問=「ネット、スマホ依存」は、医学的にどう扱われているのだろうか。

 樋口院長 物質に依存している状況を依存といいます。たばこやアルコール、薬物などがそれですね。一方、行動の過剰とそれに伴う問題を「嗜癖(しへき)」と呼んでいます。ギャンブル依存やインターネット依存がそれにあたります。ただ、「嗜癖」という言葉は分かりづらいので、より一般的な「依存」と呼んでいるのです。そうした行動の行き過ぎとその問題を「行動嗜癖」といいますが、ネットにはSNSや動画などのさまざま幅広いものを含むので、それら1つ1つについては、まだエビデンス(根拠)がありません。ただ、中でもゲームは依存として認めようというのが一般的な考え方です。依存という1つの病気として認めうる医学的知見がそろっているからです。