国内初の「ネット外来」を開設したネット依存治療の第一人者、「久里浜医療センター」の樋口進院長に話を聞いた。

 ◆質問 インターネット依存の治療とはどのようなものか

 樋口院長 依存といえば、依存の対象物を「完全にやめる」ことが治療目標です。アルコール依存では断酒、薬物なら断薬といった具合です。ところがネットの場合は、いまやネットを全部やめてしまうと生活ができなくなってしまう。そのため、その使用を減らすことが基本的な目標になります。

 ◆質問 何を減らせばよいのか

 樋口院長 例えばネットを使って「検索する」ことをやめてしまうと、生活は成り立たず、必要でしょう。一方、ゲームは必ずなければならないものではありません。日常生活に不可欠ではないもの、関係のないものについては減らしていく。具体的には、アプリごとに治療目標を立てていくというのがリーズナブルな方法だと思います。

 ◆質問 どのように減らしていくのか

 樋口院長 ネット(使用)を減らすというと、すぐ「スマホを取り上げる」「回線を切る」といったことが簡単で思いつきやすいですが、今どきそんなことをしても代わりはいくらでも見つかります。たとえばゲームセンター、ネットカフェに行く。友達に借りる。あるいは盗んでまで手に入れることもあるかもしれません。そんな状況にあって現実は簡単ではありませんが、結局は本人にネット、ゲームをすることで起きてくる問題をきちんと理解してもらって、本人の意思でゲームの時間を減らす、やめることを、私たちが支援するというのが基本となります。

 そのためにはまず、本人に対して通院してほしいということを話します。そして“この病院ではスマホを取り上げたりすることは考えてないのだ、むしろどうやってネットと付き合っていくのかを一緒に考えていきましょう”という態度を示します。