ネット依存の治療を「久里浜医療センター」の樋口進院長に聞く。

 ◆質問 「自分はどこも悪くない」と思っている

 樋口院長 本人たちはいやいやながら病院に来ているので、単に「通って欲しい」と言っても聞いてくれません。通うための理由が必要なのです。そのためには体と心の検査をします。インターネット依存で長い時間ネットを使っていると、「不活発」になり、体を全然動かさないので体力が大幅に低下しています。また、歩かないので踵(かかと)の骨がとても軟らかくなっているのです。骨は体重がかかることで硬くなりますが、ネットをするのにずっと横になっていると骨が弱ってしまうのです。そして「反復横跳び」や柔軟性、腹筋などから明らかに体力が落ちていることがわかります。そうした事実を本人にしっかり認識してもらい、現在の生活スタイルが健康に影響しているか理解してもらうのです。

 ◆質問 「可視化」「見える化」ですね

 樋口院長 次に血液を測定しデータを取ります。血液の中のヘモグロビンA1cという値は、ふつうは糖尿病では高くなりますが、ネット依存の子どもたちは食事を取らないのでむしろ下がっています。「エコノミークラス症候群」でみられる、血液が固まるマーカー(指標)などを調べます。20人にひとりぐらいは兆候がみられることがわかっています。

 つまり不活発や栄養失調であることを理解してもらいます。実際には体に大変なことが起きていることがわかると素直に受け取ってくれます。

 ◆質問 「心」は

 樋口院長 体よりももっと大切なのは心です。ネット依存になっていく場合、対人関係が苦手で、コミュニケーションに不得手感があり、現実の世界では、自分のアイデンティティーをうまく持てていないケースが多いのです。ネット依存者には「うつ」も多いのでその治療も行います。また心理の専門家を入れたカウンセリングにも治療的な側面がたくさんあります。