突然死と聞くと、多くの人は心臓の疾患(心疾患)を頭に浮かべるのではないでしょうか。実際、日本では年間約10万人の方が突然死されていて、その中の約6万人が心疾患です。亡くなった後に「そういえば、父は『最近、駅の階段を上るのがつらい』と言っていました」と家族から聞こえてくることは少なくありません。症状に気付いた時点で受診していれば、突然死は避けられた可能性があります。後悔先に立たず-。できることはしっかり行っておきましょう。

 心疾患に関する検査での基本は「聴診」「血圧測定」「心電図検査」「胸部エックス線検査」。今回は聴診について紹介します。医師が五感で患者に異常がないかを調べる方法には、「問診」「視診」「触診」「打診」、そして「聴診」があります。聴診は医師が常に持ち歩いている聴診器で、心音、呼吸音、腸管蠕動(ぜんどう)音(腸管内のガスや液体の移動するときの共鳴音)などを聞くものです。

 心臓の場合は胸のまん中に聴診器を当てて聞くと、大動脈弁の音は必ず聞こえます。大動脈弁狭窄(きょうさく)症であれば、収縮期にワーッと音がするので、まず聞き逃すことはありません。この音は頸(けい)動脈で聞いても分かります。基本は聴診です。

 初めて紹介されてきた患者さんで、聴診をすると、すごい雑音があったのです。そこで「これまでに雑音があると言われたことは」と聞くと、患者さんは「先日初めて言われ、先生を紹介されました」と。最近の傾向として、開業医の先生方は肺の音の方をしっかりチェックされているようです。だから動悸(どうき)などが気になっている人は、聴診時に「先生、心臓のチェックもよろしくお願いします」と言うのがいいでしょう。チェックする医師の気持ちが、かなり違ってきます。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)