<狭心症・心筋梗塞(5)>

 狭心症・心筋梗塞から命を守る最終手段として行われているのは、「カテーテル治療」と「バイパス手術」。カテーテル治療は循環器内科が行う内科的治療で、バイパス手術は心臓血管外科が行う外科手術です。患者さんは「身体を切りたくない」と思っている方が多いので、カテーテル治療が極めて多く行われています。バイパス手術1に対してカテーテル治療は20~50という状態です。

 これほどカテーテル治療が多くなったのは、バイパス手術が適応の患者さんにも、カテーテル治療が行われているからです。それでは、カテーテル治療に伴う合併症(脳梗塞や造影剤に伴う腎機能障害など)で生命予後を悪くしてしまいます。私が言いたいのは、カテーテル治療とバイパス手術の適応をしっかり守るべきで、これは統計的根拠に基づいて決められています。だから、循環器内科医はそれぞれの治療・手術の長所と短所をしっかり患者さんに話す必要があると考えます。

 バイパス手術が適応となる人は、「左冠動脈の基部(左冠動脈主管部)に狭窄(きょうさく)のある人」「冠動脈に3カ所以上狭窄のある人」「糖尿病のある人」「人工透析を受けている人」などです。

 左冠動脈は主管部の後に前下行枝と回旋枝に分かれます。その左冠動脈主管部はとても重要な血管なので、主管部に病変がある場合はバイパス手術をすべきです。次に、3カ所以上狭窄があってもバイパス手術だと1回で治療を終えることができます。糖尿病のある人では、カテーテル治療は再狭窄が起こりやすいことが統計的に示されています。人工透析を受けている人は狭窄部分の石灰化が強く、カテーテルで広げるには困難な場合もあり、なおかつ再狭窄を起こしやすいという結果が出ています。

 また、カテーテル治療を行う時には造影剤が使われます。造影剤は血管に色をつける薬で、これは腎機能を悪くしますので、何回も行うと腎機能をどんどん悪化させてしまいます。治療法を選択するときは、このような点を十分に話し合って最終決断をすべきです。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)