以前、認知症予防として、毒舌をやめる、適度なセックスを行う、などを挙げましたが、お酒も少量ならアルツハイマー病予防に効果があると報告されています。ビールだと1週間で中ビン1~6本、つまり1日1本以内が認知症予防に効果的です。お酒のなかでも、ポリフェノールをふくんだ適量の赤ワインがよいという報告も多くあります。

 フランスの大学の調査では、1日グラスに3杯くらいのワインを飲んでいる人は、アルツハイマー病になる危険が4分の1になったそうです。ただし、飲みすぎると逆にアルツハイマーになりやすくなるので、注意が必要です。これは、フィンランドのヘルシンキ大学医学部公衆保健学科のヤーッコ・カプリオ医師らによる飲酒の長期影響の研究によります。

 それによると、「飲んで騒ぐ=宴会」を頻繁にする人は認知症になりやすいことがわかったそうです。この「飲んで騒ぐ=宴会」とは、少なくとも月に1度、1回あたりにビールやワインを合計5本以上飲むことを指しています。この調査は、地域住民を対象にした双子調査の一環として、40歳以上の554人に行われたもので、1975年と81年に質問表で飲酒習慣について聞き、その後25年間追跡しました。そして、その人たちの認知症の有無について99年から01年の間調べた結果、対象者は65歳以上でしたが、追跡調査終了時までに103人が認知症になっていたのです。

 75年の調査開始時に「飲んで騒ぐ」経験のあった人は、経験のない人より3・2倍も認知症になる危険性が高いことがわかりました。また、81年の調査時、その前年に少なくとも2回「酔いつぶれる」経験のある人は、そうでない人に比べ10・5倍も認知症になる危険性が高いことを認めました。

 高齢者の飲酒と認知症の危険性に関する、厚労省の調査結果があります。飲酒量(350ミリリットルのビール1本相当を「1本」と換算)と「認知症の危険性(飲酒しない人が認知症になる危険性を「1」とする)」との関連を見た場合、週に「1~6本」程度の飲酒なら認知症の危険性が最も低いという結果でした。飲まない、あるいは大量に飲む人よりも、少量飲酒する人のほうが認知症の危険性が低くなっています。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。