うつ病からの回復について、「うつが治る食べ方、考え方、すごし方」(CCCメディアハウス)の著者で「新宿OP廣瀬クリニック」(新宿区)の廣瀬久益(ひさよし)理事長に話を聞いた。

廣瀬理事長は、早くからアルコール依存症の治療をはじめ不登校、引きこもり問題などに取り組み、うつ病、不安障害などのほか、国内では数少ないチック症(心理的ストレスや遺伝が原因とされている)の治療でも知られている。水戸市内にもクリニックがあり、全国から患者がやってくる。すでに1万例もの患者を回復させてきた経験豊富な精神科医の1人である。

廣瀬理事長によると、近年増えているのは「ストレス消耗性」のうつ病。過剰なストレスをため込むことで発症することが多いという。「過剰なストレスでうつ病を発症する人は、ストレスを受けやすく、その処理が下手な人です。ストレスを受けやすい原因には生まれつきの感受性の強さやストレスをため込みやすい考え方、生き方にあるといえます」と話した。

ストレス消耗性のうつ病は、慢性的にストレスにさらされ続けることで徐々に消耗し、うつ病になる。その上で運動不足や栄養の過不足、睡眠状態、不適切な生活リズムといった要素が加わり、発症しやすくなるのだ。

「たとえば『疲れた』といったことだけで、心の病かどうかを判断することはできません。しかし、最近疲れやすい、朝の目覚めが悪いといった変化に気を付けることは大切です。そして判断力が落ちてきた、注意力が落ちてミスが多くなってきた、記憶力が悪くなるといった状態があると要注意です。とくに記憶力が落ちて物忘れがひどくなった、ということは、脳にダメージが現れてきている証拠なのです」

診断の中心は、ストレスがたまりやすい要因を見つけ出すこと。生まれつきの過敏性、家族や社会の中で問題となっている考え方や生き方、仕事に追われて過度なストレス状態に置かれていないかなどを見極める。「病気の成り立ちを考えた診断が必要で、診断と治療が一体であることが大切です」。