「鎖(くさり)尿道膀胱(ぼうこう)造影検査」もまた、腹圧性尿失禁が疑われる場合の検査です。膀胱が下がっていないか? 尿道の位置は? 膀胱と尿道の角度を調べて症状をチェックします。

膀胱と尿道が骨盤底筋群にきちんと支えられて正しい位置にある場合は、膀胱の後ろ側、つまり膣(ちつ)側と尿道が作る角度は、「90~100度」です。これが、100度を超えているときは骨盤底が緩んでいて腹圧性尿失禁が起こりやすい状態だと考えられます。

検査の手順は、まず「カテーテル」という細い管を尿道から膀胱に差し込み、造影剤とともにチェーン(鎖)を挿入します。尿道はエックス線に映らないため、細いチェーンを入れて位置がわかるようにするためです。

次に、立っている状態で正面と側面からエックス線撮影します。さらに、おなかにグッと力を入れた状態でエックス線撮影を行います。

これにより、腹圧がかかったときの膀胱の位置や尿道の角度がわかるのです。腹圧性尿失禁があると、腹圧をかけたとき、膀胱頸部(けいぶ)や尿道が下がったり、膀胱と尿道の角度が大きく広がったりします。また、骨盤臓器脱の1つで膀胱が膣から落ちてくる「膀胱瘤(りゅう)」もはっきりわかります。

また、腹圧性尿失禁や骨盤臓器脱患者における骨盤底の状態を観察する方法として、「骨盤部MRI(磁気共鳴画像法)」があります。これは電磁波に共鳴しやすい水素の性質を利用した検査で、強い磁石と電磁波を使って人体内部の状態を多方向から検査し、画像診断するものです。

手順は、横になった状態でMRI撮影を行い、骨盤内の断面をチェックします。心拍動や呼吸運動の影響を受けにくい膀胱、膣、子宮など骨盤内臓器の疾患の診断にも有用です。放射線の被ばくがなく、軟部組織のコントラスト分解能が高く、女性生殖器や骨盤底の状態を診察するうえで優れています。