北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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ロカボ(ゆるやかな糖質制限)は、カロリーを気にすることなく、タンパク質と脂質は満腹感が出るまでしっかり取って、糖質だけを抑える食事法です。

タンパク質は、年配の人ほど摂取する必要があります。研究によると、若い人は1食当たり10グラムのタンパク質で筋肉合成は進みますが、高齢者は10グラムでは筋肉合成のスピードは上がらず、20グラムから上がっています。20グラムのタンパク質というと、肉、魚なら100グラム、卵なら3個、納豆1パック(30グラム)は5グラムですから4パックになります。

ひとつの食材で毎食、タンパク質を20グラム取るのは大変です。朝から肉なんて焼いてられないという人もいるでしょう。いろんな食材を取ってトータル20グラムにします。ツナ缶なら11~13グラムあります。

厚労省の食品摂取基準でも、タンパク質が不足すると、フレイル(体や心の働きが弱くなった状態)に陥りやすく、運動・認知機能が低下するとして、タンパク質摂取の重要性が書かれています。実際、身体活動量が普通の男性でのタンパク質目標量の下限は18~29歳で86グラム。65~74歳で90グラムと、若者より高齢者のタンパク質摂取が求められています。

糖質を控え、タンパク質を取り過ぎると、腎臓に負担がかかるのではと心配する人がいるかもしれませんが、タンパク質摂取量に上限(これ以上食べると有害となる量)は設定されていません。すでに腎臓の悪い人でも、米国糖尿病学会は「タンパク質制限食に腎機能保護効果はない」と13年にガイドラインを改めています。タンパク質は、インスリンの分泌を促す働きをするインクレチンというホルモンを出させ、血糖上昇にブレーキをかける役割を持っています。心配することなく「体重×1・0」(体重60キロの60グラム、70キロなら70グラム)を最低限確保するよう召し上がってください。