北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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朝食、昼食、夕食を用意し、<1>朝、昼、夕の3食すべて食べるグループ<2>朝食抜きで、昼食、夕食を食べるグループ<3>朝、昼抜きで、夕食のみ食べるグループの血糖値の変動を比較した九州大の研究があります。

血糖値が最も上がったのは<3>のグループの夕食後で、次が<2>のグループの昼食後、その次が<2>のグループの夕食後でした。血糖値の変動が一番小さかったのは<1>のグループで、1日3食きちんと食べた方が血糖値の変動は緩やかであることを示していますが、<1>のグループで3食のうち血糖値が最も上がったのは朝食後でした。

私は1日3食取りますが、確かに昼食、夕食の糖質40グラムと、朝の40グラムでは血糖値の上がり方が違います。「暁現象」(ステロイドホルモンなど血糖値を上げるホルモンが分泌され、何も食べなくとも朝方の血糖値が高くなる現象)と、1食目は血糖値が上がりやすいことが理由だと思います(このため、私は朝食は糖質量を20グラムにしています)。

急激な血糖値の変化は血管にダメージを与えて動脈硬化症を起こすだけでなく、以前、紹介したハーバード大の研究のようにエネルギー摂取の過剰、肥満を呼び込みます。ロカボ(ゆるやかな糖質制限)は糖質を1食当たり20~40グラムに制限し、血糖値の大きな変動を抑えることを目的にしています。そのためには、朝食も欠かさず、3食きちんと取ることが大切です。

農水省の「食育白書」は、朝食を食べない20~30代が依然として多いことを指摘しています。「ほとんど食べない」(16・0%)、「週2、3回しか食べない」(9・8%)で、4人に1人が朝食は抜くことが多いと回答しています。恐らくこの人たちは昼食後、夕食後に血糖値が大きく上昇しているはずです。