北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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コロナ感染が夜の街から会食や飲み会に広がりだしたことで、「家飲み」「宅飲み」がさらに増えそうです。飲酒量と死亡リスクはJカーブの関係です。飲まない人より少量飲む人の方がリスクが低く、酒量が増えるとリスクが上がっていきます。Jの角度は酒の種類によって変わり、ウオッカ、ジン、テキーラなどは角度が急ですが、ワインやビールなど醸造酒はJの幅が広くなると考えられています。蒸留酒の場合も水や炭酸で割って、アルコール濃度を下げて食事と一緒に楽しむのが体に良い飲み方です。

糖質は蒸留酒はゼロです。醸造酒でも辛口ワインはほとんどありません。日本酒は1合当たり6~8グラムあり、つまみの糖質量を抑える、主食の量を落とすなど、少し注意が必要です。ビールは以前、糖質が多く、血糖値を上げやすいとされていましたが、「日本食品標準成分表」は2015年の改訂で、利用可能炭水化物(本来の意味での糖質)は「Tr」(微量)と併記するようになりました。

6枚切りの食パン3枚を<1>水<2>ビール<3>白ワイン<4>ジンと飲み物を替えて食べたときの血糖上昇の度合いを調べた研究があります。最も血糖上昇が大きかったのは水を飲みながら食べたときで、最も緩やかだったのは白ワインと食べたときでした。ビールとジンはほぼ同じでした。

糖質ゼロ、カロリーゼロの水よりアルコールを摂取しながらの方が血糖値が上がらないのはなぜでしょうか。恐らくはアルコールによる糖新生の妨害です。肝臓は常に糖を放出していますが、アルコールはこの糖新生にブレーキをかける方向に働きます。

サングリアや梅酒など果物や糖質を加えたお酒以外は、飲み過ぎにだけ気を付けて楽しんでいただいていいと思います。