北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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ウィズコロナでマスクが外せず、熱中症が心配されています。マスクで体の熱が放出されにくく、体内温度は上昇しているのに、口の中は湿っているため、水分は足りていると錯覚する。脱水症状に気付かない恐れがあるというのです。

例年以上にこまめな水分補給が欠かせませんが、気を付けたいのが水分、ミネラルを補うスポーツドリンクです。糖質が多く、500ミリリットルで30グラムあります。2リットルのボトルなら120グラムです。ロカボ(ゆるやかな糖質制限)は1食20~40グラム、デザート用の10グラムを合わせ、1日の糖質摂取の目安を70~130グラムにしています。1日2リットル飲む人はめったにいませんが、スポーツドリンクだけでリミットに達してしまう糖質量です。

スポーツドリンクなど清涼飲料水には、異性化糖が多く使われています。トウモロコシから作られるコーンシロップを使って人工的に果糖とブドウ糖に作り替えた甘味料です。

果糖はブドウ糖の5分の1程度しか血糖値を上げませんが、カリフォルニア大デービス校の研究者は2009年、果糖は中性脂肪に変わりやすく、内臓脂肪や脂肪肝の蓄積を進め、インスリンに対する反応が悪くなるインスリン抵抗性を引き起こし、結局、ブドウ糖以上に血糖値を悪化させることを明らかにしています。果糖は体内ではブドウ糖よりもアルコールに近く、脂肪肝に加え、血中の中性脂肪値や尿酸値の上昇を起こすという研究データもあります。

ペットボトル症候群という言葉をご存じかと思います。大量に清涼飲料水を飲むことで高血糖になり、そのため、喉が渇いてまた飲むことを繰り返し、最終的に意識を失うほどの高血糖になるという急性の糖尿病合併症です。スポーツドリンクはカロリーゼロを選んで下さい。