北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

   ◇   ◇   ◇

「子どももロカボをした方がいいでしょうか」と質問されることがあります。肥満や食後高血糖がなければ、必要ありません。ただ、食後血糖値が高い20代の若者はしょっちゅう診るので、子どもたちもそれ相応の頻度になっているだろうと想像できます。昔は子どもの糖尿病といえば1型(いわゆる小児糖尿病)のことでしたが、15年前の段階で東京女子医大糖尿病センターの糖尿病の子どもたちの半数が2型(いわゆる成人糖尿病)でした。

子どもで気を付けなければいけないのはジュース類です。暑い夏になり、冷蔵庫に2リットルの清涼飲料水のペットボトルを置いている家庭は多いと思います。問題の1つは、果糖はブドウ糖以上に満腹感をつくらないことです。カリフォルニア大のグループが、脳の機能を画像化するファンクションMRIを使って調べたところ、ブドウ糖は刺激が入るのに、果糖は刺激が入らない。何杯も飲めてしまうのです。

果糖はブドウ糖に比べ血糖値は上げないのですが、中性脂肪に変わりやすいことが分かっています。タンパク質に糖が結合して細胞を劣化させる糖化反応も、ブドウ糖より果糖の方が結合スピードが早いことも分かっていて、果糖は危険であると指摘する研究者が多いのです。

清涼飲料水には、トウモロコシからつくられたコーンシロップを使い、人工的に果糖とブドウ糖に作り替えた異性化糖が使われています。果糖50%未満が「ブドウ糖果糖液糖」、50%以上90%未満が「果糖ブドウ糖液糖」、90%以上が「高果糖液糖」です。人間の味覚はブドウ糖より果糖をおいしく感じるため、果糖を強調した商品が多いと思います。4年前、「あまくない砂糖の話」という映画が公開されました。60日間、1日ティースプーン40杯の砂糖を摂取し続けると、どうなるかを描いたドキュメンタリーで、砂糖依存症の子どもたちが出てきます。果糖にも十分な注意が必要です。