世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。未曽有のパンデミックに緊急事態宣言も発令され、社会のあり方が大きく変化している。他者とのコミュニケーションのあり方も大きく変化し、終息も見通せない重圧が続く。メンタルヘルスへの影響も懸念される中、「コロナうつ」との言葉も生まれた。長期化する「新たな生活様式」の中での「心」の問題とは。市ヶ谷ひもろぎクリニックの渡部芳徳理事長に聞いた。

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「コロナうつ」とは医学的に定義されたものではなく、新型コロナウイルス感染拡大の影響により出現した、うつや精神的な不調のことが「コロナうつ」と呼ばれています。日本人はセロトニントランスポーター遺伝子でSS型と呼ばれる不安になりやすいタイプが68・2%もいることが知られています。急激なライフスタイルや環境の変化、自粛生活でのストレスなど、心身に不調が現れる状態は適応障がいとも考えられますが、不安になりやすい民族であることから、コロナうつの背景には不安症があると考えています。

その不安症とはどのような疾患なのか-。不安症とは精神疾患の中で、“不安”を主な症状とする疾患をまとめた通称で、正確には「不安症群/不安障がい群」と言います。この「不安」とは、漠然とした特定の対象がない恐れの感情で、人間にとって不安は正常な反応です。だから、だれでも不安を感じて憂鬱(ゆううつ)になったり、眠れなくなったりした経験があるのです。

ところが、不安症の人は、正常であるはずの不安の反応が、適度ではなく過剰に。だから、動悸(どうき)や呼吸困難、めまい、不眠、イライラなどの身体症状が伴うようになるのです。これが慢性化、長期化すると、「会社に行けない」「電車に乗れない」「人混みが怖い」「人と話すことができない」といった状態になり、日常生活が困難になってしまいます。まさにコロナ禍の状況とほとんど同じなのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)