世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。未曽有のパンデミックに緊急事態宣言も発令され、社会のあり方が大きく変化している。他者とのコミュニケーションのあり方も大きく変化し、終息も見通せない重圧が続く。メンタルヘルスへの影響も懸念される中、「コロナうつ」との言葉も生まれた。長期化する「新たな生活様式」の中での「心」の問題とは。市ヶ谷ひもろぎクリニックの渡部芳徳理事長に聞いた。

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「コロナうつ」になりやすい人の背景にある不安を主な症状とする「不安症」。不安症の発症には、ストレスなどの心的要因や遺伝的要因、社会的要因などが複雑に関係していると考えられています。ただ、まだ十分には解明されていません。

そんな中、近年、脳科学の著しい進歩によって明らかになってきたことがあります。心的要因などに加え、脳内神経伝達物質系が関係する脳機能異常(身体的要因)があるとする説が有力になってきました。

このコロナうつの背景にあると考えられる不安症には、いろいろな疾患が含まれています。よく知られている疾患をあげると、「パニック症」「限局性恐怖症」「全般性不安症」「社交不安症」「分離不安症」「強迫性障害」などがあります。

この中の「限局性恐怖症」は、特定の対象や状況に対して激しい恐怖反応を示す疾患。恐怖の対象は、犬や猫、昆虫、蛇といった生き物。もちろん、これだけではなく、高所や閉所、暗所といった特定の状況、植物や食べ物などさまざまです。「高所恐怖症」などはよく知られています。完全防備でクリニックを訪れる、コロナ感染に対する異常な恐怖を訴える人も含まれると思います。「全般性不安症」は、生活のすべての要素に対して過剰な不安と心配をしてしまい、さまざまな身体的症状があらわれ、日常生活に支障をきたす疾患です。

このようにいろいろ不安症には含まれていますが、その中でも代表的な不安症疾患が「社交不安症」と「パニック障害」です。これは次回に--。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)