「男性更年期障害」と一般的に呼ばれている「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」の治療は、ここまでに紹介させていただいた男性ホルモンを補充する「テストステロン補充療法」を中心に行います。それに加えて重要なのが、男性ホルモンを高めるための“生活習慣”です。今回は「運動」を取り上げます。

運動と聞いてスポーツと受け止めると、ハードな運動を頭に描く人が多い。このお勧めの運動は軽い運動で、有酸素運動の代表格といわれるウオーキングがベスト。運動をすることで筋肉が刺激されると、筋肉でテストステロンが作られるからです。

ただ、これが休憩することのないハードな運動となると、テストステロンが筋肉でつくられる以上に消費されてしまいます。LOH症候群を改善して幸せな人生を歩むには、ぜひウオーキングを生活習慣にしましょう。

ただ、だらだらとした散歩ではウオーキングといえる運動にはなっていません。緩急をつけたウオーキングが一押し。15分のウオーキングを1日4回は行いましょう。東京の人であれば、会社の最寄り駅よりも一駅前で降りて会社まで歩く。そして、普通に5分歩くと、次の5分は少しテンポをアップして歩きましょう。階段も積極的に上るのがお勧めです。

コロナ禍の今は、テレワークで会社に出勤しない日が多くなっています。できれば、自宅の周辺にウオーキングルートを開発しましょう。歩いていて幸せな気持ちになれるルートを作るのが、テストステロンを高めるには欠かせません。頑張り過ぎない適度な運動を-。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆井手久満(いで・ひさみつ) 1991年宮崎大学医学部卒業。国立がんセンター、UCLAハワードヒューズ研究所、帝京大学等を経て、20年4月から独協医科大学埼玉医療センター教授、低侵襲治療センター長。ロボット支援手術プロクター認定医、日本メンズヘルス医学会理事、日本抗加齢学会理事等。前立腺がん予防や男性ホルモンが研究テーマ。今年9月18~19日、日本メンズヘルス医学会を会長として開催する。