「うつ病」と間違えられることの多い「男性更年期障害」と一般的に呼ばれる「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」。その原因である男性ホルモンを高める生活習慣として、前回は「運動」を取り上げました。今回は「睡眠の重要性」を知ってもらいたいと思います。

男性ホルモンのテストステロンは、主に精巣でつくられますが、そのほかに、副腎や脳の中の記憶をつかさどる海馬でも作られています。作られる時間帯として特に重要なのは、夜中の1時から3時。夜更かしなどすることなく、この時間帯は“若さを保つ時間”としっかり認知して、すっきり目覚めることができる睡眠をとりましょう。

その睡眠時間はどれくらいが良いのか。人によって多少の違いはありますが、7~8時間と考えられます。2011年にシカゴ大学が「睡眠とテストステロン」の研究を発表。対象は男性10人。まず1週間、自宅で8時間の睡眠をとって過ごしてもらいました。

その後、実験室に集まってもらい、最初の3日間は10時間の睡眠、それ以降の8日間は5時間の睡眠をとってもらいました。そして、テストステロンをはかったのです。結果、5時間睡眠時はテストステロンが10~15%程度も低下したのです。睡眠不足が続くと身体はどんどん老化してしまうことを、しっかり示してくれました。

7~8時間の睡眠をとることがLOH症候群の改善に重要であるとともに、若さを保つにも重要です。さらに、それが質の良い睡眠であることも大事なポイントです。次回は「睡眠の上手なとり方」です。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆井手久満(いで・ひさみつ) 1991年宮崎大学医学部卒業。国立がんセンター、UCLAハワードヒューズ研究所、帝京大学等を経て、20年4月から独協医科大学埼玉医療センター教授、低侵襲治療センター長。ロボット支援手術プロクター認定医、日本メンズヘルス医学会理事、日本抗加齢学会理事等。前立腺がん予防や男性ホルモンが研究テーマ。今年9月18~19日、日本メンズヘルス医学会を会長として開催する。