日本疲労学会において、「疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である」と定義されています。私たちは日常生活の中でこうした疲労を感じることがありますが、この根本にもやはり活性酸素が関わっています。

オーバーワークによって活性酸素が多く発生し、それを消去する抗酸化物質が少なくなると、細胞が酸化しさび付きます。細胞がフレッシュであれば、エネルギー産生によってさび付いた部分を修復したり、細胞の生まれ変わりを助けることができます。しかし、加齢に伴う細胞自体の変化や、負荷の連続によってさび付いた部分の回復が追い付かないとガタがきます。

運動をつかさどる器官や筋肉の細胞が障害されると運動性の疲労として現れ、精神的な疲労では脳や神経の細胞が、感染性の疲労では免疫細胞がその標的になります。コロナ禍の今だからこそ、体内で発生した活性酸素を消去してあらゆる疲労を吹き飛ばしたいものです。

かつて、産官学連携プロジェクトによって見いだされたイミダゾールジペプチドという抗酸化物質があります。鶏胸肉や豚ロース肉、カツオやマグロ等に含まれており、1日200ミリグラムのイミダゾールジペプチド摂取(鶏胸肉で換算すると手のひら大の約100グラムが推奨量)が疲労感の軽減に役立つと報告されています。鶏胸肉は脂質も少なく、生活習慣病の観点からも安心な食材ですが、加熱によってかみ応えがある弾力を持つため、しっかり咀嚼(そしゃく=かみ砕くこと)できる歯を保つ心がけが大切です。

かむ力が弱くなっている場合は、ゆでてスープにするなど調理法を工夫することで摂取しやすくなりますので、無理せず徐々に慣らしていきましょう。

◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)日本大学歯学部卒。同大学大学院歯学研究科を経て東京医科歯科大学歯学部付属病院勤務。テレビやラジオでのわかりやすい解説が評判となり、雑誌のコラムや日刊スポーツでの連載を担当。文筆家としての活動も積極的に行う。現在は東京医科歯科大学非常勤講師、日本アンチエイジング歯科学会理事、複数の歯科クリニックで診療。