手洗いとともに、こまめなうがいを心がけているという方も多いと思います。日本薬学会が提供している薬学用語解説によると、うがいの定義は「喉の粘膜や口腔(こうくう)内を清潔に保つ、または感染予防や治療のために、水や薬液を口に含み、呼気によって攪拌(かくはん=かき回すこと)すること」とあります。つまり喉を洗うガラガラうがいも、口をきれいにするブクブクうがいも、どちらも感染予防に役立つ習慣と考えてよいでしょう。

目的に応じた液体を選び、シーンに合わせた使用が安心につながります。うがいに用いられる液体は、医療機関で処方される「含嗽(がんそう)剤」と、お店で自由に購入できる「洗口液」に大別されます。

含嗽剤は、歯科医院における外科処置(抜歯やインプラント手術、歯周外科など)の際に、術後の感染予防や消毒といった目的で一定期間使用していただく製品(医薬品)です。

歯科で一般的に処方されているのはベンゼトニウム塩化物という、傷口の治りを促進する作用と感染予防効果のバランスが優れている成分です。昨年話題になったポピドンヨードも医薬品のカテゴリーですが、一部にドラッグストア等で購入できる商品(第3類医薬品)もあり、生活者にとって身近な存在といえます。殺菌力が高い一方で、口の中の創傷治癒遅延や金属の腐食を招くといった報告もあり、慎重な選択が望まれます。

これに対し「洗口液」は、セルフケアのアイテムとして日常的に取り入れる製品(医薬部外品、化粧品)です。浮遊細菌を制御し口の中を浄化、口臭を防ぐ作用があります。歯科衛生士によるクリーニングといったプロフェッショナルケアの直後から使用すると、歯垢(しこう)付着抑制や歯肉炎予防効果も期待できます。含嗽剤と異なり、傷の消毒には不向きですのでご注意ください。

◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)日本大学歯学部卒。同大学大学院歯学研究科を経て東京医科歯科大学歯学部付属病院勤務。テレビやラジオでのわかりやすい解説が評判となり、雑誌のコラムや日刊スポーツでの連載を担当。文筆家としての活動も積極的に行う。現在は東京医科歯科大学非常勤講師、日本アンチエイジング歯科学会理事、複数の歯科クリニックで診療。